研究課題/領域番号 |
16K04413
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
吉川 麻衣子 沖縄大学, 人文学部, 准教授 (80612796)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 見える物語綴り法 / 戦争体験 / 沖縄戦 / ナラティヴ / 物語 / 高齢者 / 地域臨床 / 共創 |
研究実績の概要 |
「見える物語綴り法」の開発に向けて実践例を蓄積し,理論的裏付けを行うこと,また,沖縄戦体験者の多くが高齢者福祉施設に入所していることを鑑み,臨床現場での実践を通して汎用性を検討することが本研究課題の目的である。そのため,施設従事者や家族が実施できるよう方法論を洗練する必要がある。 2017(平成29)年度は,1999(平成11)年から継続してきた沖縄戦体験者との一連の研究成果をまとめ, 6月23日に書籍『沖縄戦を生きぬいた人びと―揺れる想いを語り合えるまでの70年―』を出版した。当初よりも製作費を要することとなり,2016(平成28)年度の直接経費の約半額を繰り越し,今年度の直接経費と合わせて支出した。以下,今年度の研究実績を記す。 1.本研究課題サブテーマ1に関わった20事例と,サブテーマ2に関わった12事例は,書籍の主な内容である「戦争体験を語らう場」に参加していた方々である。沖縄戦を生きぬいた者同士の語らいを通して培った精神的な支えを基盤として,本研究課題である「見える物語綴り法」の実践が展開されている。 2.「語らう場」は,個々のニーズとペースを最大限に尊重することを重視して行われた実践である。そのポリシーは本研究課題にも受け継がれている。 3.2016(平成28)年度に引き続き,「見える物語綴り法」を8事例に実施し,それぞれの研究参加者のペースと時間に合わせて終結を迎えた。これで,サブテーマ2「語らう会」参加者の新規12事例の実践は終了した。 4.「見える物語綴り法」の「可視化することが語りにどのような影響を及ぼすのか」についてインタビュー調査を実施し,その理論的な検討を行った。また,「オープンダイアローグ」の枠組みでの考察が可能ではないかと判断し実地調査を行った。その旅費の一部を直接経費(残りは自費)より支出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.「サブテーマ2:『語らう会』参加者の新規12事例の実践」は,2016(平成28)年度中旬から行い,2017(平成29)年度内で終了した。 2.「サブテーマ3:『見える物語綴り法』の理論的な検討」は,2017(平成29)年度内で終了した。「オープンダイアローグ」の理論を用いた本実践の理論的考察を試みているが,年度内には論文化できなかった。2018(平成30)年度にまとめる。 3.2016(平成28)年度より,「サブテーマ4:高齢者福祉施設における実践」の「a.実践協力者(入所高齢者)・施設との関係づくり」および「b.施設で実施する際の留意点の整理」を行い,2017(平成29)年度内で終了した。この結果については,論文化できていないため2018(平成30)年度にまとめる。 4.本研究課題の成果を,書籍『沖縄戦を生きぬいた人びと―揺れる想いを語り合えるまでの70年―』を2017(平成29)年6月23日に創元社より出版した。また,9月8日に東海学園大学(愛知県)で開催された日本人間性心理学会において,「グループ実践について世代を超えて語り合う会」という演題で口頭発表した。さらに,10月29日に大正大学巣鴨校舎(東京都)で開催されたサポートグループセミナーにおいて,「沖縄戦を生きぬいた人びと」という演題で口頭発表した。
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今後の研究の推進方策 |
1.現時点では,2018(平成30)年度以降の研究計画に大きな変更はないが,①「サブテーマ3:『見える物語綴り法』の理論的な検討」について,②「サブテーマ4:高齢者福祉施設における実践における留意点の整理」については,2017(平成29)年度内に論文化することができなかったため,早急にまとめる必要がある。 2.「サブテーマ2:『語らう会』参加者の新規12事例の実践」は終了した。研究参加者のうち数名のデータを成果として論文等にまとめる必要がある。実践途中あるいは終了後に逝去された方については,成果公開に関する同意書を交わすことができていないため,存命の方のデータに限るものとする。 3.今年度は,書籍出版に直接経費のほとんどを使用せざるを得なかったため,調査実施地である沖縄県内離島への旅費をすべて自費とした。研究の進展に支障は生じていないが,2018(平成30)年度は当初の計画に沿って進めていきたい。特に,2018(平成30)年度は,「サブテーマ4:高齢者福祉施設における実践」の「c.施設入所者との実践と評価」に集中的に取り組む。
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