研究課題/領域番号 |
16K04413
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研究機関 | 沖縄大学 |
研究代表者 |
吉川 麻衣子 沖縄大学, 人文学部, 准教授 (80612796)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 見える物語綴り法 / 戦争体験 / 沖縄戦 / 共創 / ナラティヴ / 物語 / 高齢者 / 地域臨床 |
研究実績の概要 |
本研究では,自らの人生の総括として,生きてきた軌跡を「見える形」で残したいと望む沖縄戦体験者の声をもとに,その方法の開発に取り組んできた。2019年度は,2016年度より継続してきた地域における個別事例の総括と,臨床現場での実践事例の蓄積に尽力してきた。また,2019年度はハワイにおいて日系人の研究協力者を対象に本研究の実践を行うことができた。 1.サブテーマ2「語らう会」参加者12名の事例については,研究成果としてまとめた(掲載は2020年度)。 2.沖縄県内の高齢者福祉施設3カ所での実践は継続中である。当初の予定であった10名から7名になり,そのうち2名が9月に逝去したため,新たに2事例の実践が10月より始まった。認知症の進行や逝去による研究への影響は想定されていた課題である。また,2020年度は福祉施設での実践は不可と考え,これ以上の事例蓄積は困難である。終結には至らなかった事例についても,施設従事者や家族からのフィードバックを通して本実践の意義を考察していく。 3.施設従事者や家族が実施できる方法として「見える物語綴り法」の論を構築することが本研究課題の目的の一つであるため,家族等に通信機器等を用いたインタビュー調査を行う方法に切り替えて実施する。 4.ハワイで行った日系アメリカ人(2世)の戦争体験をもとにした「物語綴り法」の実施事例は,本研究課題の考察を深化させる実践となった。文化的な差異も考慮しつつ,成果を2020年度にまとめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,平均年齢85歳を超える高齢者福祉施設の入所者とともに実践を進めてきた。2019年度で「見える物語綴り法」 の実践を終える予定だった研究協力者2名が2019年9月に急逝した。新たな協力者2名と2019年10月より実践を開始したが,年度内に協力者が納得のいく終結を迎えることができなかった。そのため,補助事業期間を延長させていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染予防の観点から,本研究の研究計画を大幅に変更せざるを得ない状況にある。沖縄戦体験者(高齢者)との実践を,オンラインを用いて継続実施することは不可だと考えられる。そのため,施設従事者および家族へのインタビュー調査に切り替え,体験者の実践事例についてはこれまでの期間で得られたデータのみで成果を総括する。 また,2020年7月開催予定であった国際学会(国際心理学会)で本研究課題の成果報告を行うことが決定していた。しかし,大会が1年延期となり学会での発表が行えなくなったため,紙媒体での論文投稿を行うことにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者の急逝により,年度途中に新規事例実践を開始し,年度内に終結に至らなかったため1年間延期した。 しかし,感染症予防の観点から高齢者との対面実施が難しくなった。そのため,家族等とのオンラインを用いたインタビュー調査に切り替えることにする。調査方法変更に伴う機器の整備に支出する予定である。
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