人生の総括として,生きた軌跡を「見える形」で残したいと望む沖縄戦体験者の声を発端に,「見える物語綴り法」の開発に取り組んできた。補助事業期間を延長して臨んだ2020年度には、前年度10月より開始した研究協力者2名(91歳、89歳)との研究実践を総括し、2020年7月開催の国際学会(ICP国際心理学会)において成果報告を行う予定だった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、感染・重症化のリスクが高いとされる高齢者と対面して研究を継続することは大変困難になり、研究が一時ストップした。 このような状況下で研究を継続するためにどのような工夫が講じられるかを考えた。研究協力者とオンラインを用いた「見える物語綴り法」の実践を試みた。2名の協力者にタブレットとモバイルWi-Fiをそれぞれ貸与し、ご家族の協力を得て、相互にとって安心・安全に研究継続できないかを考えた。慣れない方法であったため、準備に多くの時間を要し、対面で実施していた時よりも自発的な語りが幾分少なくなったものの、2名の協力者がそれぞれ満足のいく形で実践の終結を迎えることができた。オンラインに馴染みが薄いと考えられていた高齢世代でも、周囲の協力と工夫によって研究実践が可能になるという、次の研究へ繋がる知見を得ることができた。 なお、国際学会は2021年に延期されたが、オンライン開催となったため、事業をさらに延長することなく、本研究テーマに関する事業は2020年度を最終年度とした。
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