共働きが増え、さらに加速するIT社会において、乳幼児の感情調整の発達を促すためには、子育ち・子育て援助として、保育所等における保育者の介入が必要になると考えられる。本研究の目的は子どもの感情調整の発達を促す保育者の援助を明らかにすることである。乳幼児が不快感情を表出する場面を抽出し、子ども理解に基づく発達援助について保育所において、①インタビュー調査及び②質問紙調査「乳児から5歳児の保育についてのお尋ね」を実施した。未就学児の感情調整の発達とその援助について、アタッチメント概念とコミットメント概念を用いて、関東と関西の公立保育所・認定こども園に勤務する保育者約1300名から回答を得て分析・考察した。 その結果、集団保育の体験は、親子関係から仲間関係への移行期にあたり、就園後の適応困難な場面に際し、子どもが保育者に不快感情というSOSを表出するのは、集団場面においては日常的な経験であり、保育者の援助が得られるという安心感によって,子ども同士の関係が形成され、集団において感情調整の発達が促されることが示唆された。 実証的に検討した結果、 ①子ども同士の関係において、未就学児が不快感情を抱える場面では、保育者は子どもの気持ちに寄り添い、感情を代弁する、状況を説明するなどの援助を行うこと、②ディリープログラムを円滑に進める上で子どもの思いとの間に齟齬が生じ、子どもが不快感情を表出する場面では、保育者が拠り所とする素朴理論によって援助内容が異なること、③子どもの感情調整の発達を関係論的視点から援助する保育者、子どもの行動をコントロールすることを保育者の力量と捉え行動論的視点から援助する保育者、感情調整の発達という視点が伴わない保育者等の存在として大別されること、④子どもへのコミットメントは高いものの、子どもの不快感情の表出を困ったこととして捉える保育者も存在することが明らかになった。
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