研究課題
本研究では、時間文脈に依存した音韻系列の保持メカニズムが、長期音韻知識に蓄えられた音韻系列の表現様式にも関与していると仮定し、さらに、長期音韻知識として保持されている時間情報が、音韻的作動記憶において運用されると想定している。ヘッブ反復効果実験によって、長期音韻知識の形成過程をシミュレートし、その中でリズム構造の役割を検討してきた。ヘッブ反復効果とは、直後系列再生の実験中に、同一の記銘リストが繰り返し呈示されると、その反復されたリストの系列再生の成績が向上するという現象である。先行研究では、同一の記銘リストであっても、時間構造が異なる系列が反復呈示された場合にはヘッブ反復効果が見られないということが知られていたが、2016年度、2017年度の研究からは、ピッチアクセントによるリズム構造の変化が、ヘッブ反復効果を減少させないことを示した。この現象は繰り返し確認され、ピッチアクセントによるリズム構造の変化は、ヘッブ反復効果には影響しないことが示された。また、非言語性の空間系列の直後系列再生では、時間構造の変化がヘッブ反復効果に影響しないことも示され、時間情報に敏感でない学習メカニズムの存在も指摘した。2018年度には時間構造に依存するリズムのそのものの再生実験を行い、リズムパターンの記憶にもヘッブ反復効果が存在することを確認した。本年度は、構音器官を使えないような条件においては、リズムパターンのヘッブ反復効果が生起しないことを確認し、英国の会議で報告した。また、これまでの研究成果をまとめ、国際一流誌Current Directions in Psychological Scienceにヘッブ反復効果の「多層学習仮説」を報告した。
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Current Directions in Psychological Science
巻: in press ページ: -
Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition
巻: 45 ページ: 573-590
10.1037/xlm0000606