研究課題/領域番号 |
16K04426
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
渡邉 創太 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (80738386)
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研究分担者 |
中村 哲之 東洋学園大学, 東洋学園大学人間科学部, 講師 (10623465)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | セキセイインコ / デルブーフ錯視 / 同心円錯視 / 視角 / ヒト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト・セキセイインコ・ハトの3種における2つの錯視図形(デルブーフ錯視、ティルト錯視)に対する錯視知覚傾向を、2つの観察距離(近・遠)条件それぞれで明らかにすることである。初年度である平成28年度は、セキセイインコにおけるデルブーフ錯視図形の近距離での錯視知覚傾向を調べた。 コンピュータディスプレイ上に左右対呈示された赤色正方形図形の大きさを弁別する課題をセキセイインコ4個体を対象に訓練し、その後、左右いずれか一方の正方形に、緑色正方形枠が付着した条件で同様の訓練およびテストを行なった。この実験結果からセキセイインコにおける錯視知覚について何らかの考察が可能である場合、続いてハトを対象に同様の実験を行う予定であったが、結果は予想に反して、低難易度(2つの赤正方形サイズの差が大きい)の際には訓練どおりの弁別を行うが、高難易度(差が小さいか同サイズ)の際には、周囲枠が付着した方の正方形を選択するという傾向が色濃く見られるものであった。このような傾向を示した理由として、低難易度であれば正方形サイズを元に弁別を行なっていたが、難易度が高い時、枠がある方が彼らの注意と選択をひきつけたことが考えられる。すなわち、この実験は、セキセイインコでは、本研究で用いた対呈示による強制二選択課題は動物のデルブーフ錯視知覚実験には適さないことを示唆する。よって、ハトでの実験は中止し、実験手続き自体を修正し、もう一度セキセイインコにおけるデルブーフ錯視知覚傾向を調べなおすことが必要である。 なお、この実験手続きを用いてセキセイインコと同時並行でヒトでも実験を行なったところ、ヒトでは典型的なヒトにおけるデルブーフ錯視知覚傾向と同様の錯視知覚傾向が確認された。このことから、少なくともヒトにおいて、観察距離はデルブーフ錯視知覚傾向に重大な影響を与えないことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、ヒト・セキセイインコを対象にした近距離観察条件でのデルブーフ錯視実験を完了することができた。しかし、その結果を踏まえてハトを対象にした近距離観察条件でのデルブーフ錯視実験およびこれら3種を対象にした遠距離観察条件でのデルブーフ錯視実験を行う予定であったが、得られた結果は、セキセイインコにおける錯視知覚傾向について議論が出来ない予想外のものであった。よって、実験手続きを抜本的に修正して、再度セキセイインコ・ヒト・ハトを対象にした近距離観察条件でのデルブーフ錯視実験を行う必要がある。既に手続きを修正した実験の実施を開始しているが、完了はしていない。 一方、セキセイインコを対象とした近距離観察条件でのデルブーフ錯視実験を論文にまとめ投稿し、受理に至った点は予定以上の進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
目標刺激(赤色正方形)を、左右対呈示した強制二選択課題を行うと、難易度が高い時に、錯視知覚とは無関係に、周囲枠の影響を受けてしまう恐れがあり、錯視知覚傾向が分析できない。よって、目標刺激を単独呈示し、その大きさを大小2つに分類する条件性位置弁別課題に課題を変更し、セキセイインコ・ヒト・ハトの3種におけるデルブーフ錯視知覚傾向をもう一度調べる(現在実験中である)。また、その結果を踏まえてハトを対象にした近距離観察条件でのデルブーフ錯視実験およびこれら3種を対象にした遠距離観察条件でのデルブーフ錯視実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
近距離観察条件での諸実験を終えた上で、遠距離観察条件実験用の実験装置を作製する予定であったが、近距離観察条件での諸実験結果が予想外の結果であり、手続きを修正した追加実験の実施が急遽必要となり、装置作製を延期したため。
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次年度使用額の使用計画 |
遠距離観察条件実験用の実験装置を作製。
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