研究実績の概要 |
本研究の目的は、ヒト・セキセイインコ・ハトの3種における2つの錯視図形(デルブーフ錯視、ティルト錯視)に対する錯視知覚傾向を、2つの観察距離(近・遠)条件それぞれで明らかにすることである。 初年度、当初予定していた同時対呈示による選択課題を用いてセキセイインコにおけるデルブーフ錯視知覚傾向を調べたところ、デルブーフ錯視の種比較研究を実施する際、同時対呈示課題が不適であることが示唆された。このことから2,3年目、研究デザインを単独呈示による条件性弁別課題に変更し、セキセイインコ・ハト・ヒトにおける近距離条件でのデルブーフ錯視実験を実施した結果、デルブーフ錯視図形を近距離で呈示した際、セキセイインコ・ハトでは過大知覚傾向が見られた。これは、セキセイインコ・ハトのデルブーフ錯視図形に対する知覚傾向がヒトのそれと異なる可能性を示唆する。ヒトにおいては、典型的な視距離(遠距離)における錯視傾向と著しく異なる傾向は見られなかった一方、先行研究とは異なる錯視傾向も一部には見られた。このことは、観察距離という要因はヒトの錯視知覚傾向に影響を及ぼし得ることを示唆し、同時に錯視知覚の種比較研究を行う上で、動物種という要因のみならず観察距離という要因をも合わせて考察すべきではないかという、本研究の計画当初からの主張の妥当性を支持するものである。 最終年度は、ヒトにおける近距離条件でのティルト錯視知覚傾向を調べた。全体としては、遠距離条件と同様の錯視傾向が見られたが、一方で大きな個人差と妨害線分の本数の効果が見られたことから、実験方法を洗練させるなどより詳細な分析が必要である。 研究期間を通して、錯視傾向を一変させるような強い効果は視角に見られなかったが、錯視傾向に対し少なからず影響を与える可能性が示唆された。鳥類における遠距離条件の実験が完了に至らなかったため、早々に研究完成を目指す必要がある。
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