研究実績の概要 |
感情や感性を伴う空間知覚・空間認知の研究を行い、知覚や判断に及ぼす潜在的あるいは身体的要因を議論し、成果を公表した。 (1)草間彌生作品に触発された円形密集刺激に対する不快感の研究では、我々がこれまで示してきた画像の中周波帯域のコントラストが高い場合に加え、低域のコントラストの高さも影響することを、画像の嫌悪感と個人の集合体恐怖特性のクロス研究によって明らかにした(佐々木ら, 2017)。(2)絵画空間の評価に関しては、線描と輪郭の抽出、静止画像における動きの表現、左右空間における時間の進行方向など、身体性が関与する表現に関し、絵画空間の知覚と認知の観点から議論を行った(三浦,2017, a,b,c)。(3)写真のミニチュア効果に関しては、高い俯角では諸要因の交絡が距離判断を難しくし、ミニチュア効果が得られやすくなることを示唆した(Miura, 2017)。この仮説を確認するドローン実験を計画したが、飛行制限地区にかかり、中断中である。(4)自己の鏡像における単純接触効果(繰り返しの接触が対象への好意度を高める現象)の実証研究を新たに行い、自己像への反復接触が潜在的自尊心の低下を抑制すること、つまり、単純接触効果は潜在的自尊心に影響することを指摘した(松田ら, 2017; Matsuda,et al., 2017)。 (5)空間と感情の連合について、両手・両足による反応時間課題を用いてそれぞれの部位における効果の関係性を検討したところ、身体部位間において連合の効果に有意な相関が示されなかったことから、身体部位ごとに独立した連合が形成されることを明らかにした(山本・佐々木,2017)。(6)光点で構成された人の身体運動の映像を用いて、運動の知覚速度や速度弁別感度が光点の大局的・局所的な空間構造により影響を受けることを示すデータを公表した(Ueda et al., 2018)。
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