研究課題
我々は本研究の着手までに,青斑核(LC)から前帯状皮質(ACC)へ投射するノルアドレナリン(NE)が,意思決定のモード(目標指向性⇔習慣)シフトのためのスイッチであり,背側線条体内側部と外側部の機能的バランスの制御を通じてこの機能を実現する,という作業仮説をもった。本研究は,この仮説を検証するために必要な3つの基盤技術;(i)LC-NEニューロンの活動操作(H28~29年度);(ii)カテコラミンニューロンの活動抑制(H29~31年度);(iii)げっ歯類の意思決定制御モードの評価系(H29~31年度),を開発した。今後はこれらを高度に融合させた実験が可能となった。(i)Ionotropic Receptors (IR84a/IR8a)がフェニル酢酸依存的に陽イオンを透過する性質を利用し,LC-NEニューロンにIR84a/8aを発現する遺伝子改変マウスを作出,LCへのリガンド注入やリガンドのメチルエステル体の末梢投与に反応して,ACCにおけるNE遊離が促進することを,脳内微少透析法により確認した。また,α2受容体刺激薬をLCに注入したマウス行動実験から,NEニューロンの活動抑制の証拠を得た。(ii)遺伝子改変ラットとウィルスベクタを併用し,イベルメクチン開閉性塩化物チャネルをラットの腹側被蓋野(VTA)ドパミンニューロンに発現誘導した。リガンドVTA注入や末梢投与が,餌報酬によって強化された目標指向性行動の動機づけに及ぼす効果を評価した。動機づけレベルは有意に低下し,標的ニューロンの活動抑制を示唆した。(iii)意思決定の素過程として,報酬に基づく道具的学習(空腹ラットのレバー押しを餌で強化する)を用いた。報酬タイプ特異的な飽和化や風味嫌悪条件づけにより報酬の誘因価値を低下させ,それに応じた行動遂行レベル低下の程度を測度として,意思決定の制御モードを推定できることを示した。
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Scientif Reports
巻: - ページ: -
Frontiers in Cellular Neuroscience
巻: 13 ページ: 1-9
10.3389/fncel.2019.00547
bioRxiv
10.1101/831313