研究課題/領域番号 |
16K04432
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
竹内 龍人 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50396165)
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研究分担者 |
吉本 早苗 中京大学, 心理学部, 助教 (80773407)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 視覚運動 / MRS / 神経伝達物質 / GABA / グルタミン酸 / 錯視 |
研究実績の概要 |
視知覚の実験心理学的研究においては個人差の問題はこれまで見過ごされてきた。本研究計画では、日常生活において重要な機能である運動視においてなぜ個人差が生じるのか、その理由を明らかにすることを目的とした。そのために、各種の運動視課題を遂行し知覚の個人差を推定すると同時に、MRS(磁気共鳴分光法)により脳の各部位における脳内神経伝達物質の濃度を測定する。知覚の個人差と神経伝達物質の濃度との関係から、視覚運動情報処理のどのレベル(低次/高次)において、どのようなメカニズム(抑制性メカニズムか興奮性メカニズムか)の関与により運動視の個人差が生じるのかを特定することを目指す。 今年度は、前年度までに得られた視覚運動プライミング現象とMRSデータとの関係性に関する解析を進めた。その結果、正の運動プライミング、つまり運動の同化が生じやすい人はDLPFC(前頭前野背外側部)において興奮性の神経伝達物質であるグルタミン酸の濃度が高いことがわかった。その一方で、V1やV5といった低次の視覚領域、あるいは抑制性の神経伝達物質であるGABA(γアミノ酪酸)の濃度との有意な相関はなかった。この結果は、視覚運動の同化/対比という錯視現象における個人差は、従来指摘されていたような低次の運動検出機構における抑制作用に基づくのではなく、高次における興奮性の作用によるものであることがわかった。機能的にいえば、高次プロセスにおける注意の機能との関連性が強く示唆される。以上の結果をまとめ、海外学術誌に発表した(Takeuchi, et al., 2017, Philosophical Transactions B)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は視覚的運動現象の異なる側面(時空間的な同化と対比)における個人差を脳内神経伝達物質の濃度から理解することを目的としている。今年度は視覚運動における時間的同化と対比の錯視に関するデータをまとめ、海外学術誌に発表することができた。この点については目標を達成することができたといえる。 ただし、運動視のもう一つの側面である空間的な同化と対比については、実験環境の整備や実験プログラムの作成に取りかかることができなかった。前年度までに得られた実験データのまとめと論文化に想定以上の時間がかかったためである。来年度はこの点の進捗をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
前頭前野背外側部における興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の濃度が、時間的同化と対比の錯覚の強さと相関していることが前年度の研究から判明した。同時に行っていた予備実験から、視覚運動における空間的同化と対比は、時間的同化と対比の場合と異なり、視覚の低次過程(おもに第一次視覚野)における神経伝達物質(GABAとグルタミン酸双方)の濃度と関連している可能性があることがわかっている。来年度は、この運動視における空間的同化と対比に関するデータの取得と解析をさらに進め、学会および海外学術誌への発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度のデータをまとめ論文化する過程が想定以上に時間がかかった。そのために、次に計画していた実験環境整備に関する遅れから、予定していた予備実験の一部が遂行できなかった。この実験にかかる費用の支出ができなかったことにより、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度前半は、前年度に得た空間的同化と対比に関するデータの論文化を目指す。次年度後半は新しい実験環境の整備と予備実験の遂行を進める。次年度使用額が生じた助成金は、この二つの計画において使用する予定である。
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