研究課題/領域番号 |
16K04433
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
金城 光 明治学院大学, 心理学部, 教授 (00327298)
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研究分担者 |
清水 寛之 神戸学院大学, 人文学部, 教授 (30202112)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタ認知 / 生涯発達 / 高齢者 / 自己効力感 |
研究実績の概要 |
H29年度は主に以下の3つの点から研究を進めた。 【1】記憶の自己効力感と記憶モニタリングとの関連:高齢者の記憶の自己効力感が日常活動の程度と関連することが明らかになり、今年度論文化した(金城・清水, 2018)。しかし、実際の記憶成績と記憶の自己効力感の関連の有無や程度についての知見は一貫しておらず、そもそも高齢者は自身の記憶力のモニタリングが正確にできているのかという議論がある。そこで、これまでのデータからソースモニタリング課題時における記憶のモニタリング力の正確さについて、年齢群を5群に分けて分析比較した結果、高齢者の課題直後のモニタリングは概ね健全に保たれている可能性が示唆された。 【2】記憶の自己効力感と一般的および他領域の自己効力感との関連:本研究の目的の一つは記憶の自己効力感の特性を明らかにすることである。H28年度の研究より医療・健康情報の入手行動は情報入手の自己効力感と関連していることが明らかになった(金城ら, 2017)。そこで、特定他領域としてこの自己効力感、2種類の一般的な自己効力感、および記憶の自己効力感との関連を大学生206名を対象に調査した。結果、記憶の自己効力感は、一般的および特定他領域の自己効力感とも関連している可能性が示唆された。 【3】感覚能力低下説の検証のための予備調査:本研究の目的の一つは記憶の自己効力感に関連する要因を感覚能力低下の観点から明らかにすることである。日本人の感覚能力低下の意識については未だよくわかっていないため、加齢により自覚する感覚能力の変化への意識について、20歳から90歳までの643名の対象者を五つの年齢群に分けて、身体と精神の二側面から加齢の適応過程について調査し、論文化した(金城ら, 2018)。自由記述で得られた単語の形態素分析より、中年期以降物忘れ(特に人の名前)と視力低下についての言及が一貫して認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
記憶の自己効力感の特性を明らかにするためには、一般的な自己効力感との関連も考慮したいと考え、その調査を行なった。そのため、当初の計画よりも若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度に明らかになった点について論文としてまとめていないものもあるため(研究実績の概要の【1】と【2】)これらについての論文化を行う。H29年度の途中で、H30年度はカナダのUniversity of British Columbia(UBC)大学において研究を行うことが決定したため、当初の日本で年齢横断的に認知課題と意識調査を行う計画であった本調査を実施することが難しくなった。本年度の研究から中年期以降の感覚能力の低下として顕著に認められた点の一つは、主に老眼によると考えられる視力の低下であった。UBC大学では視覚の実験環境が整っているため、記憶の自己効力感に関連する可能性が考えられる感覚能力低下説について、今後は視覚能力との関連から、記憶課題の成績、記憶のモニタリングの正確さ、記憶の自己効力感について研究を進め、高齢者の記憶の自己効力感に介在する要因についての研究を行いたいと考える。ただし、研究環境によっては研究方法等に変更が強いられる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)新たに計画に加えた調査を行っており、当初より計画が遅れている。そのため、謝金等の未使用額が発生している。
(使用計画)未使用額は本年度以降の調査で謝金等で必要となる。
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