研究実績の概要 |
これまでの調査から、高齢者の記憶の自己効力感は日常で重要と思う活動量との正の相関が認められ(金城ら, 2017)、基本属性にかかわらず、包括的な自己効力感、精神的健康、主観的幸福感、音楽活動の自己効力感との正の相関があった(水戸・金城, 準備中)。この傾向は大学生でも認められ、記憶の自己効力感は、包括的な自己効力感、健康情報探索傾向の強さや健康状態満足度と正の相関があることがわかった(金城、準備中)。このように記憶の自己効力感は、日常生活や精神的健康や主観的幸福感と関連し、包括的な自己効力感や領域固有の効力感(音楽活動や健康情報探索活動)とのポジティブな関連がある。他方、記憶課題の成績との関連では、全体的な記憶の自己効力感は記憶成績とは関連せず、メタ記憶下位尺度との相関は認められ(記憶の不安傾向が低いほど記憶成績が良い)、課題直後の記憶評価は記憶成績と高い相関が認められた。つまり、評価の対象がより具体的になるほど記憶モニタリングの正確さは向上した(金城・清水, 2020)。ただし、Kinjo & Shimizu(2014)と同様、メタ記憶下位尺度において記憶成績が良い人ほど記憶力を低く評価しており、年齢と教育年数を制御しても、記憶の支配の下位尺度において記憶成績がよいほど統制感が低いという負の相関が認められた。 そこで、記憶の自己効力感と記憶課題のモニタリングの正確性への影響要因として認知方略や謙遜態度などを検討するため、18~80歳までの若者群、中年群、高齢者群の合計307名を対象に小グループでの対面質問紙調査を行った。調査では4種類の記憶課題とともに、メタ記憶尺度、2種類の自己効力感測定尺度、認知方略尺度、謙遜態度尺度、精神的健康度の測定尺度、うつ傾向尺度を用いた。結果は現在分析中である。 本年度の成果は国内学会発表4件、国際学会発表1件、投稿中論文2本である。
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