本研究は他者との共行為が自身の行動に影響するのかについて,事象関連電位を用いて検討すること,さらに共行為事態における情報処理の加齢変化を明らかにすることを目的とした。 本研究は3刺激オッドボール課題を変容させて実験を実施した。画面上に4つの正方形を同時に呈示し,各試行ではボールに見立てた円がいずれかの正方形にランダムに呈示された。課題を2人で行う共有条件では,画面に向かって左側に着席した参加者は左下の正方形が,右側に着席した参加者は右下の正方形が割り当てられた。各参加者は自身に割り当てられた正方形の中にボールが呈示されたらボタンを押すよう要請された。個人条件ではそれを1人で行った。左側着席者にとって右下の正方形にボールが呈示された場合,それは他者の刺激であり,自身には関係のない,無視すべき刺激である。しかし,共有条件において,隣で着席している他者が何をするべきかという表象(課題表象)ができていれば,無視すべき刺激であってもそれに対して反応が起こると推測した。 本研究からは,入力情報が他者刺激であった場合,その反応抑制に対して他者の課題表象が影響すること,そこに年齢群間の差はないことが示された。しかし,他者の立場で刺激評価を行うという点では若齢者の方が高齢者よりも鋭敏であることが明らかとなった。 上記の研究成果を受け,他者の視点で他者刺激を評価するならば,それは行動にも反映されるだろうと推測された。しかしながら,運動準備電位が明瞭に出現する課題を用いて,同様の実験を若齢者に対して行ったものの,他者効果を示す結果は明白に現れなかった。
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