研究課題/領域番号 |
16K04437
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
小森 政嗣 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (60352019)
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研究分担者 |
池田 功毅 中京大学, 心理学研究科, 研究員 (20709240)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 表情認知 / 感情 / 生成モデル |
研究実績の概要 |
本研究は,自然な表情出現頻度に基づく確率的表情認知モデルの構築を目指すものである.平成28年度は(1)長時間計測可能な非拘束表情計測環境の構築と計測,および(2)静的表情素の抽出と弁別感度の測定を計画していた.このうち(1)については近年の技術的な動向を踏まえてシステムの検討を行った.また(2)については顔形状と主観評価の関係をもとに認知的なモデルの構築について検討を行っている.顔形状に対する評価・判断においてどのような形態的な要素が寄与しているかを推定することは容易ではない.その理由の一つは,顔形状と主観評価・判断の関係が非線形であることにある.このような顔形状と主観評価の非線形な関係を検討するために,28年度は空間構造を考慮した階層ベイズモデルの一つであるCARモデル(Conditonal Autoregressive Model; 条件付き自己回帰モデル)による表情認知・評価モデルの検討を行った.CARモデルは空間相関が存在している,すなわち「隣同士の観測地点では類似した値が観測される」という前提を置くことで,評価値を決定するパラメータの推定を行うものである.ここでは一般化プロクラステス分析により作成された顔形状空間と,個々のサンプルに対してリッカート尺度などの離散量で評価された値の関係をCARモデルおよび順序ロジスティック回帰モデルを用いることで検討を行った.この手法は,評価,すなわちどのような形態的要素に着目して判断を行っているかに関する個人差についても検討できる.実験の結果,階層ベイズによる空間統計モデリングが表情の認知モデル構築において有用である可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人間のインタラクションは時間の中で生じるものであり,表情もまた基本的に連続的なものであるが,従来の研究では一般的に時間情報を潰して分析が行われてきた.一方,本研究は時間情報を捨てずに表情の連続的な変化を捉えることを目的としている.人間のコミュニケーション行動に見られる時系列情報の分析手法は定番といえるものは現状存在せず,試行錯誤で解析手法の構築を目指している.平成28年度については,階層ベイズモデルを用いた様々な時空間モデリングを試みたものの,公表に結びつくような十分な成果は得られなかった.
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今後の研究の推進方策 |
表情分析に関して,階層ベイズモデルを用いた時空間モデリングを進めていくため,(1)モデルの再検討,(2)実験データの蓄積の両面から研究を推進していく必要がある.(1)については,近年の機械学習手法の進展を鑑みて生成モデル以外の手法を一部取り入れることも検討する.また(2)についても積極的に進めていく必要があると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
分析モデルの構築が遅れているため,実験的な検討に入ることができなかったことが,次年度使用額が生じた主な理由である.また,この遅れのために成果公表を行うことができなかったことも理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
表情計測のための実験を行うとともに,成果を積極的に公表するために使用する予定である.
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