コミュニケーション場面においては,複数の表情が同時もしくは短い時間的なずれを伴って様々な時間範囲で表出される混合表情(例えば嫌悪と喜びが同時に表出される「苦笑い」など)がしばしば観察される.混合表情の開始,終了時点を確定することができれば,様々な混合表情を比較することが可能となる.2018年度は2つの方法で,モーションキャプチャで計測された顔3次元形状の時系列データをもとに,混合表情のパタンを抽出することを試みた;(1) まず,モーションキャプチャデータの各フレームにおける全ての標識点座標値を多変量データとみなし,一般化プロクラステス法により座標点を整列する.さらに,これらに対して主成分分析や独立成分分析などの次元圧縮手法を適用する.これによって得られた多変量時系列データの各次元に対して時系列方向に隠れマルコフモデル(HMM)による状態推定を行う.各次元の状態の違いから表情の混合パタンを推定する.この検討の結果,快表情,不快表情ともに,急激に変化する形状成分と,ゆっくり変化する成分の両方が含まれることが示された.また,覚醒状態はある特定の顔面形状成分の変化の持続時間の違いとして現れることが示された.(2) 標識点座標の整列後,すべての次元をまとめて隠れマルコフモデル(HMM)による状態推定を行い,表情表習字の感情と状態遷移パタンの関係を詳細に検討した.快・不快表情それぞれに特徴的な状態遷移があることが示された.
|