研究課題/領域番号 |
16K04448
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
岡田 忠雄 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30344469)
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研究分担者 |
山田 玲子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (10322869)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 養護教諭 / 医療事故 / 予防教育 / 小児医療職 / 医学的根拠 / 学校 / 医療訴訟 / 法的責任 |
研究実績の概要 |
【目的】学校管理下での児童・生徒の負傷・死亡例に関する学校事故訴訟判例分析を平成29年度から継続して行い、学校設置者・教員の法的責任、法的リスクの詳細に加えて、具体的な事故発生時の内容等の現状を検討した。 【対象】昭和31年から平成8年の学校事故(負傷・死亡例)における判例61件【方法】学校事故判例及び論文等調査を行い、検討項目は学校事故における法的リスクの詳細と死亡事故の内訳である。 【結果・考察】①最終審は、最高裁判決10件、高等裁判決6件、地方裁判決45件であり、判決は、棄却が26件、損害賠償が18件、刑事罰が4件、差し戻し23が4件、不明が9件であった。②死亡事故は25件、被害者が死亡しなかった事故は34件、被害者が死亡したが事故との因果関係を裁判で認められなかった事故は2件であった。死亡事故の学校種別では小学校3件、中学校8件、高等学校・高等専門学校14件、大学2件であった。③死亡事故に対する被害者の判決勝敗では、勝訴16件、敗訴11件であり、死亡事故が故に被害者側が勝訴しやすいという訳ではなかった。勝訴した場合は、損害賠償8件と最も多く、次いで刑事罰が4件であった。④死亡事故の内容は、過失による事故9件、自殺6件、故意の暴行等5件、練習中5件、自然災害1件、ケンカ1件であった。④死亡事故の発生した時間帯は授業中10件、部活動5件、その他6件(放課後3件、体力テスト準備1件、生活指導1件、登校時1件)、不明6件であった。死亡事故の発生状況では校内が8件、校外が16件、不明が3件であった。 【結語】学校事故では児童・生徒が死亡するリスクを認識し、死亡事故を含めて訴訟になった場合は、損害賠償や刑事罰等の法的リスクもあった。以上の研究成果を平成30年度に学会発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、学校で発生する小児医療事故の訴訟判例を、小児医療職(医師・看護師)の専門的立場・観点から、養護教諭の法的責任、原因究明、及び適切な事故後対応法を検討し、養護教諭が抱える医療リスクを明確にし、そのリスク軽減を図る方策を検討する。加えて、平成30年度に養護教育専攻課程の学生にとってニーズが高い、医療事故予防教育法(アルゴリズム教育)の新規開発を行うことを最終目的とした。具体的には、①学校における小児医学救急疾患の医療訴訟例の更なる渉猟を進めて医療職観点から集計し、本邦における学校救急の現状を把握(医療訴訟の判例収集は複数年に及ぶ)②医療事故予防教育法を趣旨としたアルゴリズム教育の検討③医療事故予防を重視した小児医学アルゴリズム教育法の作成(漫画媒体も使用)④小児医学、臨床医学、養護演習等の講義・実習で資料として使用し、その有用性を検討する予定であった。 当初の研究計画として、平成30年8月までに医療事故予防を重視した小児医学アルゴリズム教育法の事前準備及び評価実験として小児医学、臨床医学、養護演習等の講義・実習で資料として使用し、その有用性の検討解析を行い、平成31年3月までに医療事故予防を重視した小児医学アルゴリズム教育法の開発、評価及び研究成果のとりまとめを行う予定であった。実際に、事前調査を開始すると、新たな知見等の当初予想し得なかった事情により本アルゴリズム教育法方法についての各種条件の最適化が必要となり、事前調査の再検討の後、変更した新たな方法(作成した小児医学アルゴリズム教育資料において記載事項を少なくすることや臨床写真と的確なイラスト漫画等を併用)として本調査に進む必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の研究期間延長申請を行い、結果、承認され平成31年に継続研究を行う。平成30年度の事前調査として、医療事故予防を重視した小児医学アルゴリズム教育法を作成し開始したが、新たな知見等から当初予想し得なかった事情により、本アルゴリズム教育法方法についての各種条件の最適化が必要となった。事前調査の再検討の後、変更した新たな方法(作成した小児医学アルゴリズム教育資料において記載事項を少なくすることや臨床写真と的確なイラスト漫画等を併用)として本調査に進む必要があった。 今後の推進方策としては、学校における小児医学救急疾患の医療訴訟例の更なる渉猟を進めて医療職観点から集計し、本邦における学校救急の現状を把握し、医療事故予防を重視した小児医学アルゴリズム教育法の作成(臨床写真や漫画媒体等も使用)し、小児医学、臨床医学、養護演習等の講義・実習で資料として使用し、その有用性を検討していく。学校で発生する小児医療事故の訴訟判例を、小児医療職(医師・看護師)の専門的立場・観点から、養護教諭の法的責任、原因究明、及び適切な事故後対応法を検討し、養護教諭が抱える医療リスクを明確にし、そのリスク軽減を図る方策を検討し、加えて、養護教育専攻課程の学生にとってニーズが高い、医療事故予防教育法(アルゴリズム教育)の新規開発を行うことを最終目的としていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定していた設備備品費の中でPC機器が当初の予定より減額して購入できたことや、学校における小児救急疾患の医療訴訟判例の渉猟数が増加する予定の次年度以降に判例収集費用がより予定されること、また、各種PCソフトやPC周辺機器等の消耗品も判例数に伴って使用することに変更した等の理由によって未使用額が生じた。一方、本研究情報の収集や研究課題点設定・解決等の糧を収集するために学会旅費が予定より増加した。未使用額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画はPC機器・周辺機器・漫画製作ソフト等の設備備品や消耗品購入に充てることにしたい。加えて、研究成果の新たな知見として、学校事故では児童・生徒が種々疾患で死亡するリスクをもつことがわかり、訴訟になった場合は、各種法的リスクもあった。今後、研究成果発表や情報収集のため、学会発表・参加が増えることも予想され、次年度以降、医療事故予防を重視した小児医学アルゴリズム教育法の作成(漫画媒体も使用)に関する物品や消耗品等、また、旅費や学会参加費等の増額、研究図書の購入を増やすこと、また判例収集の方法を追加する可能性もあり、これらの諸経費が増額することが見込まれる。
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