【目的】学校事故訴訟判決に影響を与える法的要点や危機管理を調べ、小児医学の講義や演習資料とし有用性を検討した。 【対象】昭和31年から平成8年の学校事故(負傷・死亡例)における判例61件と当専攻所属学生【方法】学校事故判例と論文等調査を行い、小児医療職観点も加味して、1)学校事故の判決に影響を与える法的要点、2)医療リスクマネジメント、3)学校事故判例における原因と病態、応急処置法等を調べアルゴリズムとして小児医学や演習資料とし対応の禁忌肢も加味し、医療リスク軽減に「役にたったか」等を調査した。 【結果・考察】1)判決の判断に影響を与える法的要点は、①事故発生の危険性を具体的に予見することが可能である予見可能性の特段の事情があるか否か(14件検討)と②事故の内容や発生状況等が学校における教育活動、およびこれと密接不離関係にある生活関係か否か(3件検討)であった。2)学校では、「一度起きたことは再び起きる可能性があること」「他校で起きた事故は自校でも起きる可能性があること」「学校には、他の組織にはない特有の危機があること」を十分認識し、様々な危機をリストアップする必要が示唆された。3)1例を挙げると、徳島地裁S47.3.15[高等学校養護教諭損害賠償請求事件]X:死亡した生徒(発汗と吐き気で保健室来室後)A:養護教諭、[死因]母親が解剖を拒否したため、断定はできないが急性心臓死であることは間違いないとの判例記載に対して、まずXに対する解剖がなされておらず死亡原因が特定されていないことが問題点であり、学校で一過性の暑気当たりという安易な判断をしていた。即時に校医に連絡して相談する等の児童・生徒管理を行う旨を強く示唆し、学生も医療事故予防として有用であったとした。 【結語】小児医療職観点による学校事故訴訟判例分析を用いた医療事故予防教育は、学生ニーズにつながる可能性が示唆された。
|