最終年度においては、日本教育制度学会第26回大会(於:神戸大学)において、口頭発表「2000年以降の米国連邦政府による教員資格認定制度に関する施策の特質-高等教育法改正法の分析を手がかりとして-」(単独)を行った。高等教育法は、米国連邦政府の主要な奨学金についての規定であり、高等教育への進学等に際して経済的な格差を是正するプログラムの根拠となる。この改正を分析することで、本研究の目的である教員資格認定の多様化が学校区の格差にどのような影響を及ぼすのかについて考察することができると考えた。 分析の結果、同法の改正を通じて、教員養成や教員資格認定プログラムに対して連邦政府の役割を限定的なものにし、資金的な援助についても撤退するという姿勢を看取することができた。上下両院の共和党は、トランプ大統領の規制撤廃の施策と連動する形で高等教育法改正を通じて高等教育に対する連邦政府の関与を限定的なものにすることを企図している。これらの方針が、学校区間の格差に今後どのような影響を及ぼすのかについて注視する必要があることを指摘した。 また、教員養成及び教員資格認定プログラムについては、高等教育の理論ではなく、初等中等教育における「効果」を念頭に置きながら運営がなされるべきだという認識を看取することができた。高等教育法改正法案の中にも同様の主張が見出せるのであり、教員養成及び教員資格認定プログラムについては、高等教育の文脈ではなく初等中等教育の文脈で語られることになったということができよう。高等教育機関の専門性や自律性によって教員養成及び教員資格認定プログラムが運営されるのではなく、初等中等教育において「効果的な」教授を行える教員養成及び教員資格認定プログラムが評価されるという事態が進行し、従前の教員養成及び教員資格認定制度や教職の専門性に及びす影響について注視する必要性について言及した。
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