平成28年度実施の岐阜県全小規模中学校対象の書面調査、平成28年度及び29年度実施の小規模中学校(岐阜県N市立T中、O市立N中)と教職大学院との連携協働に基づく小規模校授業研究プロジェクトにおける若手教員のニーズや実践状況の分析から、層の薄い中堅教員への業務集中による多忙化状況のなかで、かれらと若手教員との日常的なコミュニケーションが不十分となり、さらに中学校では小規模化に伴う教科内個業化によって、専門教科の知識・技能に関する若手教員の学びが困難となっている現状が明らかになった。また、教科内個業化の進行する現状で、異教科間の学びの方法や内容はどのようなものかを理論的・実践的に明らかにすることは重要なテーマであることが明らかになった。 そこで、本年度(平成30年度)は、岐阜県G市立H中において、授業実践を軸とした小規模校若手教員の資質・能力の育成、学び合う教員組織づくりという目標の共有のもとに、異なる三つのコミュニティ(①授業実践基礎力UPコミュニティ、②教科専門力UPコミュニティ、③校務遂行力UPコミュニティ)から成る校内研修組織を編成し、教職大学院現職教員院生層の参画のもとにプロジェクトを実施した。三つのコミュニティの設定の意義と関係は次のようである。実践の基礎段階としての汎用性の高い実践的な知識や見識を継承できる①のコミュニティ(教科を越境するコミュニティ)における学びをもとに、教職大学院現職教員の参画や近隣学校間連携による教科専門性の高い教育内容・方法に関する知識や見識を継承できる②のコミュニティでの学び、さらに、校務分掌・学級経営・教員協働等に関する知識や見識を継承できる③のコミュニティでの学びをデザインし、実践した。そして、若手教員との面談、授業実践記録、コミュニティ談話分析を相互に関連付け、コミュニティでの学びと若手教員の成長との関連を明らかにしようとした。
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