• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

戦後教育改革におけるジェンダー秩序の再編に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K04468
研究機関京都大学

研究代表者

小山 静子  京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (40225595)

研究分担者 石岡 学  同志社大学, 文化情報学部, 助教 (00624529)
前川 直哉  東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 特任研究員 (20739156)
土田 陽子  和歌山大学, システム工学部, 特任准教授 (30756440)
今田 絵里香  成蹊大学, 文学部, 准教授 (50536589)
林 葉子  大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (60613982)
土屋 尚子  大阪芸術大学, 芸術学部, 講師 (70710599)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード男女共学 / 男女別学 / ジェンダー / 新制高等学校
研究実績の概要

本研究は、戦後教育改革によって再編された中等教育に焦点をあてながら、その過程においてどのようなジェンダ―秩序が構築されたのかを、実証的かつ具体的に解明することを目的としている。その際に注目するのは、戦前の男女別学体制から戦後の男女共学体制への転換であり、そのために、旧制の中学校・高等女学校をそのまま新制の男子高校・女子高校とした地域、完全に男女共学化した地域、男女共学化しつつも前身校を反映させながら男女別定員を設けた地域の3つにわけて、研究を進めている。
今年度は、青森県・福島県・群馬県・京都府・大阪府・和歌山県の6つの地域の公立高等学校に関する研究を行ったが、新制高等学校の発足に際して、青森県・福島県・群馬県は戦前の男女別学を継承した別学校が存在し、京都府・大阪府・和歌山県は男女別学から共学へと転換したところである。しかし、同じく男女別学・男女共学といっても、その内実には大きな相違が存在していた。
青森県では、戦後しばらく別学体制を維持した学校や戦後別学校として新設された学校だけでなく、戦後共学化し、それが維持された学校や、別学校へと変化した学校が存在している。群馬県では、旧制中学校を普通科の新制男子高校とすることに強いこだわりがあり、実質的な男女共学の公立高校はほとんどないのが実情であった。福島県では、市部で別学校、郡部で共学校と別学校が設置されたが、別学校の中から共学化したものが一部あるものの、基本的には別学校が主流であった。このように、同じ別学校が存在するといっても、その内実には大きな違いが存在している。
それに対して、京都府・大阪府・和歌山県では、共学への移行はGHQによってかなり強引に行われたものの、一旦成立してしまえば比較的スムーズに共学が維持されている。ただ、占領解除された1952年になると共学に対する不満の声が議会等で若干あがっていることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、青森県・福島県・群馬県・京都府・大阪府・和歌山県の6つの地域の公立高等学校に関する研究を行ったが、新制高等学校の発足に際して、青森県・福島県・群馬県は戦前の男女別学を継承した別学校が存在し、京都府・大阪府・和歌山県は男女別学から共学へと転換したところである。府県をあげて共学化した地域では、発足当初こそ大きな問題として意識され、抵抗感が存在していたが、その後は比較的順調に共学が維持されていった。それに対して別学校が存在した地域では、別学の継続、別学から共学となり再度別学へ、別学から共学へ、といったパターンが存在する。また別学校が存在する地域のなかには、共学としてスタートしながら、後に別学校へと変化した学校もあったことが明らかとなった。
このような様々なパターンの存在の背景には、旧制の中学校・高等女学校に対する伝統的な観念や、それに愛着をもつ同窓会の影響力、男子の進学校としての存在意義、運動場や家庭科教室などの学校設備の充実度、「男女は根本的に異なる」とするジェンダー観、などが複雑に絡み合っていることが判明した。
公立高等学校はそれぞれの地域の歴史や文化に支えられた教育機関であり、戦後教育改革も地域ごとの独自の展開があったと考えられるが、その多様性を探るうえでも、今年度の研究は意義があり、本研究課題は順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

今年度行った6つの地域の事例研究から、旧制の中学校・高等女学校から新制の高等学校への転換における男女共学制の採用や男女別学制の継続が、それぞれの地域事情に鑑みながら、多様に行われていたことが判明した。またそれぞれの地域の歴史や文化だけでなく、占領政策の進め方の違いも大きく影響を与えていることも明らかになった。
今後、より多くの、旧制の中学校・高等女学校をそのまま新制の男子高等学校・女子高等学校とした地域や、完全に男女共学化した地域を取り上げるのはもちろんのこと、男女共学化しつつも前身校を反映させながら男女別定員を設けた地域の研究が十分にできていないので、この点に重点をおいて、研究を進めていきたいと考える。
なおその際、それぞれの地域における占領政策の展開や公立高等学校と私立高等学校との関係性などにも目配りして、公立高等学校がおかれている地域特性の解明にも力を注ぎたいと思う。

次年度使用額が生じた理由

今年度の研究では、当初、想定していたよりも史料複写の必要性が低く、それに伴う支出が減額となった。そのため、アルバイトを使って複写した史料の整理なども行う予定だったが、それも必要とはならず、結果的に謝金の支出も抑えられた。

次年度使用額の使用計画

次年度では、今年度よりもより広範な地域を史料調査する予定である。そのため、翌年度分として請求した助成金に合わせて、次年度に回した予算を主に旅費に使用したいと考えている。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (2件) 図書 (6件)

  • [雑誌論文] ジュニア小説における性愛という問題2017

    • 著者名/発表者名
      今田絵里香
    • 雑誌名

      成蹊大学文学部紀要

      巻: 52 ページ: 23-46

  • [雑誌論文] 男性同性愛の戦後史研究とジェンダー2016

    • 著者名/発表者名
      前川直哉
    • 雑誌名

      歴史評論

      巻: 796 ページ: 61-74

  • [雑誌論文] 地方における高学歴女性のライフコース選択――県立和歌山高等女学校の事例から2016

    • 著者名/発表者名
      土田陽子
    • 雑誌名

      和歌山大学紀州経済史文化史研究所紀要

      巻: 37 ページ: 1-16

  • [学会発表] 高度成長期のテレビドキュメンタリーが描いた「世代間断絶」 NHK「日本の素顔」「現代の記録」「現代の映像」を対象として2016

    • 著者名/発表者名
      石岡学
    • 学会等名
      日本社会学会第89回大会
    • 発表場所
      九州大学
    • 年月日
      2016-10-08
  • [学会発表] 東京、福島、双葉郡――「中央/周縁」の非対称な構造という視点から2016

    • 著者名/発表者名
      前川直哉
    • 学会等名
      日本解放社会学会第32回大会
    • 発表場所
      東北学院大学
    • 年月日
      2016-09-05
  • [図書] 通信女学講義録/日本新婦人/婦人世界【復刻版】解題2017

    • 著者名/発表者名
      小山静子
    • 総ページ数
      16
    • 出版者
      柏書房
  • [図書] 性を管理する帝国――公娼制度下の「衛生」問題と廃娼運動2017

    • 著者名/発表者名
      林葉子
    • 総ページ数
      536
    • 出版者
      大阪大学出版会
  • [図書] 〈男性同性愛者〉の社会史――アイデンティティの変容/クローゼットへの解放2017

    • 著者名/発表者名
      前川直哉
    • 総ページ数
      234
    • 出版者
      作品社
  • [図書] 文化現象としての恋愛とイデオロギー2017

    • 著者名/発表者名
      今田絵里香・西兼志・遠藤不比人・日比野啓・田中一嘉・三浦國泰・林廣親・鹿野谷有希・吉田幹生
    • 総ページ数
      328
    • 出版者
      風間書房
  • [図書] 学校のポリティクス2016

    • 著者名/発表者名
      小山静子、小玉重夫、藤田英典、青木栄一、大桃敏行、志水宏吉、小国喜弘、菊地栄治、木村涼子、村上祐介、広瀬裕子、苅谷剛彦
    • 総ページ数
      334
    • 出版者
      岩波書店
  • [図書] 映画は社会学する2016

    • 著者名/発表者名
      今田絵里香・野中亮・西川知亨・丸山里美・赤枝香奈子・西村大志・坂部晶子・工藤保則・井上義和・近森高明・松浦雄介・木村至聖・岡崎宏樹・菊池哲彦・野村明宏・竹内里欧・阿部利洋・阪本博志・多田光宏
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      法律文化社

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi