研究課題
本研究は、戦後教育改革によって再編された中等教育に焦点をあてながら、その過程においてどのようなジェンダー秩序が構築されたのかを、実証的かつ具体的に解明することを目的としている。その際に注目するのは、戦前の男女別学体制から戦後の男女共学体制への転換であり、そのために、旧制の中学校・高等女学校をそのまま新制の男子のみ/女子のみの高等学校とした地域、完全に男女共学化した地域、男女共学化しつつも前身校を反映させて男女別定員を設けた地域の3つに分けて、研究を進めた。平成30年度は最終年度ということもあり、研究代表者・研究分担者・研究協力者がそれぞれ分担して研究している地域、つまり、札幌市、青森県津軽地方、福島県、群馬県、東京都、京都市域、大阪府、和歌山市、神戸市、久留米市、熊本市、鹿児島市のそれぞれの状況についての総括的な研究を行った。その結果、言うまでもないことではあるが、それぞれの地域における中等教育をめぐる歴史的文化的状況の相違や、戦後教育改革に大きな影響力をもった地方軍政部の方針の違いによって、新制高等学校の成立のありようは大きく異なり、男女共学/男女別学をめぐる上記の3つの相違が生み出されていたことが明らかになった。しかも、1950年代に入ると、占領からの独立という政治的状況の変化にともない、戦後初期の改革の問い直しがはじまり、それが高等学校における男女共学/男女別学にも変容をもたらしていった。しかし、戦前から戦後、占領下から独立という政治体制の大きな変化、そして男女共学の成立にもかかわらず、ジェンダー観には根本的な変化がみられなかったことも明らかになった。中等教育は、国が定めた教育制度や教育政策に規定されながらも、具体的な教育政策の展開は地域によって大きく異なっており、個々具体的に男女共学/男女別学の実態を明らかにしていくことが必要であると考える。
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和歌山大学紀州経済史文化史研究所紀要
巻: 39 ページ: 39-58
10.19002/AN00051020.39.a39