前年度は、教科の本質を追求しつつ資質・能力の育成につなげていく授業像(「教科する(do a subject)」授業)をより原理的・実践的に洗練した。また、そうした授業改善を実現する学校改善(教師個々人の授業改善に止まらない教師集団としての組織的な授業改善)のための指針も仮説的に提起した。 平成30年度は、「教科する」授業をデザインする上での実践指針を定式化するとともに、教材研究の方法論も明らかにした。また、米国の評価研究の到達点(パフォーマンス評価論や「学習としての評価」論)もふまえながら、資質・能力ベースのカリキュラム改革を評価においてどう具体化するかを検討し、学習評価改革の動向の分析や評価のあり方の提案を行った。さらに、教師の学びを促す校内研修の方法論として注目されているリフレクションについて、日本の教育実践研究の蓄積に照らしてその意味と見落とされている側面の両面を明らかにした。 上記の成果をふまえつつ、大阪市立本田小学校、熊本大学教育学部附属小学校、伊丹市立東中学校、新潟大学教育学部附属新潟中学校などで、「教科する」授業を実現し資質・能力を育む単元開発や授業づくりの取り組みを進めた。また、大阪府教育センターが府下の高等学校の学校改善をめざして実施している、「授業改善に関するカリキュラム・マネジメントリーダー研修」の企画や実施にアドバイザーとして関わることを通して、学校ぐるみの授業改善を実現する校内研修の進め方の指針をガイドブックにまとめ、ウェブ上で公開した。さらに、安芸高田市立美土里小・中学校と進めてきた授業改善を軸にした学校改善の記録を刊行した(『授業改善8つのアクション』東洋館出版社)。 教科教育や高等教育関連の諸学会で資質・能力ベースのカリキュラム改革についての招待講演を行い、他分野への発信も行った。
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