本研究の最終年度にあたる平成30年度は、特別なニーズのある子どもを含む通常学級で編成される学習集団を、前年度までに実施した日本の授業研究や教授学の盛んなドイツでのフィールドワークをはじめ、収集した文献を中心に考察し、年間を通じて高めていく学習集団の具体的な指導法とカリキュラムを検討した。具体的には、ドイツ教授学をはじめ個別化と集団化に関する教授学やカリキュラム論を基本的な理論とし、日本の小学校において特別なニーズのある子どもを含む学習集団を高める学級づくり・授業づくりの分析から、指導法とカリキュラムについて検討し、学習集団づくりの発展モデル(試案)と指標(試案)を作成した。 以上の研究成果については、これまで発表した雑誌論文や著書とともに、本年度末には研究成果報告書として『インクルーシブ教育における学習集団の質的発展を目指した指導法とカリキュラムの開発』を印刷・刊行した。研究成果報告書の構成は、Ⅰの「インクルーシブ教育における学習集団の質的発展の構造」では、インクルーシブ教育に求められる学習集団の質的発展の構造に必要な視点を明らかにし、Ⅰで明らかにした視点をふまえ、学習集団の質的発展について年間を通じて指導の見通しが持てるように、Ⅱでは「インクルーシブ教育における学習集団づくりの発展モデル(試案)」を、Ⅲでは「インクルーシブ教育における学習集団づくりの指標-学習規律-(試案)」を仮説的に作成した。Ⅳではドイツの調査をふまえ、ドイツにおけるインクルーシブ教育のカリキュラムの構想を明らかにした。
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