研究課題/領域番号 |
16K04472
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研究機関 | 関西福祉大学 |
研究代表者 |
鈴木 幹雄 関西福祉大学, 発達教育学部, 教授 (70163003)
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研究分担者 |
阿部 守 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60167947)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 芸術アカデミー改革 / 発想法教育学 / バウハウス / J・イッテン / シュトゥットガルト芸術アカデミー / 改革的伝統 / アドルフ・ヘルツェル / ヘルツェル学派 |
研究実績の概要 |
本共同科研の第2年度調査・研究活動とその成果は次の通り。 Ⅰ. 現地調査・資料調査:鈴木幹雄の現地調査・研究活動は、シュトゥットガルト、フライブルクを中心としたヘルツェルの発想法教育についての学説史研究の調査、並びにクレーフェルトにおける繊維工芸学校におけるJ・イッテンの教育についての予備調査が実施された。他方また、阿部 守の国内調査・研究は次の通り行われた。前年度国内調査(勝井三雄氏への構成教育導入期の調査インタビュー、②武蔵野美術大学図書館での資料調査実施他)に基づき、東京教育大学構成教室と工芸教室の授業内容の再構成と授業内容の検証、並びにそれが今日のわが国の基礎教育・構成教育に与えた影響の研究。 Ⅱ. 第二年度研究成果は次の通りであった。①鈴木「実践的教育方法学の教育学的貢献とその意味を振り返る―草創期教育方法学・芸術教育学確立期におけるその貢献と栄養供給を事例として―」(『教育実践方法学研究』、第3巻1号、2017)、②鈴木「ヘルツェル学派における発想法教育学端緒の誕生とシュトットガルト・アカデミーの改革的伝統――2000年代ドイツ学説史研究にみるヘルツェル研究の成果を手掛かりとして――」(『関西福祉大学紀要』、第21巻、2018.3)、③阿部「日本におけるバウハウス発想法教育学の成立とその周辺」、『福岡教育大学紀要』第67号、第5分冊、2018.3)。 Ⅲ.以上の研究によって、①鈴木の平成28-29年度の研究を通して、ヘルツェル学派における発想法教育学の端緒がいかなる点にあったのか明らかとなり、シュトットガルト・アカデミー、ヘルツェル学派で学んだイッテン教育学の発想構造の原点が把握可能となった。他方また阿部の平成28-29年度の研究を通して、わが国におけるバウハウス発想法教育学の受容事情・バウハウス発想法教育学の成立受容の基本的輪郭が把握可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 第二年度(平成29年度)研究計画では、次の三項目が主要研究課題として位置づけられた。 ①ヘルツェル学派の改革的伝統からイッテンのバウハウス教育学への展開過程、②バウハウス、イッテン・シューレ、クレーフェルト工芸学校におけるイッテンの教育実践と導入教育(学)の確立、③戦後改革的芸術大学にみる導入教育(学)受容と発想法教育学の波及効果。①、②は鈴木幹雄の主要研究課題に位置付けられ、③は阿部守、鈴木幹雄の主要研究課題に位置付けられている。 2.同年の研究成果は、①に関しては、一本の基礎論文が用意された(鈴木幹雄「ヘルツェル学派における発想法教育学端緒の誕生とシュトットガルト・アカデミーの改革的伝統――2000年代ドイツ学説史研究にみるヘルツェル研究の成果を手掛かりとして――」)。また②の課題に関しては、先行研究の解読・研究が終盤にまで至っていたが、新任校の仕事により、学会発表を諦めざるを得ない職務事情が生まれた為、学会発表を果たせなかった。ただ、発表原稿作成により、学会誌への投稿原稿の元原稿が用意されたので、年内に論文原稿投稿1本か2本が実現される予定。③に関しては、鈴木と阿部により、それぞれ1本が実現された(鈴木「実践的教育方法学の教育学的貢献とその意味を振り返る―草創期教育方法学・芸術教育学確立期におけるその貢献と栄養供給を事例として―」、阿部「日本におけるバウハウス発想法教育学の成立とその周辺」)。 3. 上記①の研究課題に関して、シュトットガルトのスペシャリストの助言により、ドイツ語圏における良質な研究書を識りることができた。その為第3年度に良質なアカデミックな研究書の成果を講読・翻訳し、我々の研究成果に統合することによって本共同科研テーマに即した研究を開花させる前提が用意された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成30年度には、鈴木は、先行研究と現地調査を手掛かりとした平成28-29年度の研究蓄積を踏まえて、<1930年代クレーフェルト繊維工芸学校におけるイッテン発想法指導と発想法教育学の中にA・ヘルツェルの発想法教育学の端緒的視点がいかに受け継がれていたか>を解明する。他方、阿部は平成28-29年度の研究<わが国におけるバウハウス発想法教育学の受容事情・バウハウス発想法教育学の成立受容の基本的輪郭>、並びに平成29年度のドイツ、ノルウェー事例にみる現地調査を踏まえて、わが国におけるバウハウス発想法教育学の歴史的・実践的・教育学的意味を解明する。 (2)前年度迄の調査・研究で入手した 以上の専門的知識を基に、学術書公刊を視野に入れて研究を統合的にまとめ、束ねる。最終年度の春に共同研究者会議を開き、文献・実践的構成論に基づいた分析・研究を再検討する。そして研究上弱い部分を早期に割り出し、補強する。また同年度の初秋には、研究代表者がドイツとコンタクトをとり、シュトゥットガルト市ヘルツェル・アルヒーフ管理者シュテファイー・ハーベル氏、バウマイスター・アルヒーフ管理者ハトヴィッヒ・ゲーツ氏の助言・校閲を得る。 (3) 研究が当初計画どおりに進まない時の対応:研究分担者が当初計画どおりに進まない場合には、他の近接テーマ分担者に協力を依頼し、同時に次年度の旧当該分担者への配分予定予算を新規分担者に配分する。止むを得ない事情の場合には、新たな研究分担者への交代を検討する。また研究期間の1年間延長が必要と判断された場合には、必要に応じ、1年間延長を検討・申請し、研究成果の水準と密度を上げる努力をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科学研究費助成研究の初年度は、研究代表者が前任校退職の後、現勤務校への移動の始めての年にあたり、職務を優先せざるを得ない状況にあった。しかも、同職務の中には、平成30年度から現勤務校の大学院教育学研究科を発足させる準備・発足作業も含まれており(大学院教育学研究科発足準備委員)、当初計画していた初年度におけるドイツ研究・調査を1年間延期せざるを得なくなった。 同事情により、当初の1年目研究計画のドイツ現地調査は第2年度に行うこととなり、当初の第2年目の研究計画のドイツ現地調査は第3年度に行わざるを得なくなった。以上の理由により、本研究では止むを得ず、第2年度の使用額が次年度へ積み残される事情が生じることとなった。
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