平成29年度は、地域系学部のディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーやカリキュラム・マップについて調査を行い、それぞれの人材育成上の目標やカリキュラムについての分析を進めた。 地域系学部においては、目標上能力要件を重視する傾向が強いことが推察されるものの、ディシプリンに基づいてカリキュラムが構築されている学部や学科と比べた場合、能力要件は柱といえるほどのものには至っていないと考えられる。それは、特に体系性を担保する要素が明確でないという点から判断されるものである。ただし、能力要件は体系性を担保する要素となり得る可能性はある。それは、地域系学部においては演習や実習の割合が比較的高く、座学を中心とした学習形態での知識の獲得と演習や実習を通じた知識の活用能力や汎用的能力の修得とが往還的に行われるようなカリキュラムが編成されている事例が多く見られることから推測できるものである。 こうした研究成果については、筆者が所属する組織の紀要において発表を行った。研究全体としてはまだ推測の域を出ていない事項もあるものの、能力要件が現段階では体系性を担保する要素とまではいえないことが明らかになったという点において、カリキュラムの体系性を担保する要素を明らかにするという本研究の目的については、一定の成果を得たものと考える。今後は、こうした点についてカリキュラム構築に実際に携わった者の認識を検証するとともに、能力要件が体系性を担保する要素となるのに必要な事項についての検討をさらに進め、本研究全体の成果を明らかにしたい。
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