2019(令和元)年度は、第一に、昨年度から取り組んできた幼稚園令制定の背景にあった欧米の幼稚園批判の影響について、論文「19世紀末~20世紀初頭の欧米における幼稚園批判とその日本への影響」(『人間教育の探究』第31号)にまとめた。また、戦前日本の幼児教育に重要な役割を果たしたキリスト教主義幼稚園・保姆養成校の歴史的位置についても、論文「日本の幼児教育におけるキリスト教主義幼稚園・保姆養成校の歴史的位置」(『幼児教育史研究』第14号)にまとめ、公表した。 第二に、1900年代の保育内容・方法改革に貢献した東基吉について、アメリカの幼稚園改造運動やフレーベル研究との関連に着目して検討を行い、東の保育論の性格を明らかにした(「東基吉のフレーベル研究と保育内容・方法改革」日本ペスタロッチ-・フレーベル学会第37回大会発表)。また、大正期の保育日誌の分析を通して、当時の幼稚園教育の実際に迫った(「保育日誌にみる大正期の幼稚園教育」日本保育学会第72回大会発表)。 第三に、1910年代以降課題となっていた幼稚園と小学校との連絡問題について、とくに小学校低学年改革との関係に着目して関係史料の検討を行い、その特質を明らかにした(「幼稚園と小学校の連携・接続をめぐる歴史的考察」『初等教育資料』第985号)。 第四に、これまでに収集した史料をもとに、『近代日本幼児教育基本文献集』第Ⅲ期(全8巻、日本図書センター)を監修・刊行し、第Ⅰ~Ⅲ期の文献解説を別冊として付した。また、関西連合保育会の機関誌『関西連合保育会雑誌』を復刻した(『復刻版 関西連合保育会雑誌』全2巻、不二出版)。
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