研究課題/領域番号 |
16K04492
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研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
佐野 正子 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (80316778)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 女子高等教育 / 宗教的寛容思想 / 東京女子大学における建学の精神 / エリザベス・ヒューズ / ピューリタニズム / キリスト教学校 / 道徳教育 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、本研究の二つの柱のうち英国での女子高等教育推進運動の思想的・宗教的背景に関する研究領域の成果として、日本ピューリタニズム学会研究大会でのシンポジウム「ピューリタニズムとイスラームとの対話」においてパネリストとして「17世紀イングランドにおける宗教的寛容思想の神学的構造」と題して口頭報告を行った。夏にはオックスフォード大学への研究旅行を実施し、ボドレイアン図書館にて文献を参照しつつ、学会での口頭報告を原稿化するための作業を進めた。その際海外研究協力者Sir Brian Harrison教授との研究会議を実施し示唆を得た。これらにより口頭報告は「17世紀イングランドのピューリタニズムにおける宗教的寛容思想の神学的構造」と題する論文として完成し出版した。さらにこの研究領域の成果としてピューリタニズムにおける自由と寛容の精神に注目し、論説「宗教改革と現代─自由と寛容の精神を求めて─」を出版した。また宗教改革とそれ以降のキリスト教史の部分を担当して『永遠の言葉』(共著)を出版した。 本研究のもう一つの柱である、日本における女子高等教育創設における英国女子高等教育推進運動からの影響に関する研究領域の成果としては、東京女子大学創設者の一人安井てつと津田塾大学創設者の津田梅子らに多大な影響を与えたエリザベス・ヒューズの日本での講演活動に関する資料の分析・検討を進め、その中間的成果として論説「東京女子大学と建学の精神」を出版した。さらに最終的研究成果として、エリザベス・ヒューズの講演活動を対象とする研究論文の完成に向けて作業を進めた。 本研究の柱となる二つの研究領域に関連する応用的な研究として、現代のキリスト教学校における宗教教育の研究がある。この研究成果として「キリスト教学校における道徳教育」と題する招待講演をキリスト教学校伝道協議会において行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の一つの柱である、英国女子高等教育推進運動の思想的・宗教的背景の解明の研究領域においては中間的成果として日本ピューリタニズム学会での口頭報告を行い、その報告を論文として出版したこと、さらにこの研究領域において、ピューリタニズムの自由と寛容の精神に関する論説を出版したこと、また宗教改革とそれ以降のキリスト教史の部分を担当して共著として『永遠の言葉』と題する本を出版することができた。 また本研究のもう一つの柱である日本での女子高等教育創設における英国女子高等教育推進運動からの影響に関する研究領域については、東京女子大学の創設者のひとりである安井てつに多大な影響を与えたエリザベス・ヒューズの日本での講演活動に関する中間的な成果として論説を出版することができた。 さらにこれら二つの研究領域の応用的な成果として、キリスト教学校における道徳教育に関する歴史的・制度的検討を進め、招待講演を行った。 以上の理由から本研究はおおむね順調に進展していると判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の一つ目の柱である英国女子高等教育推進運動の思想的・宗教的背景の領域に関しては、17世紀ピューリタニズムにおける宗教的寛容思想の中でも、特にジョン・ミルトンおよびラディカルなセクトにおける宗教的寛容と自由の思想の解明が新たな研究重点項目として設定された。そのため英国の研究機関に研究旅行を実施し、この重点項目に関する文献調査および複写・収集作業を行い、その成果として研究論文を発表する。 本研究のもう一つの柱である日本における女子高等教育創設への英国女子高等教育推進運動からの影響の領域に関しては、既に国会図書館およびボドレイアン図書館で複写・収集した大量の文献資料の分析作業を進め、エリザベス・ヒューズの日本での講演活動を包括的に扱う研究論文を最終的成果として出版するための作業を進める。
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