• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

遊びの援助者(教師)に求められる<身体知>獲得に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K04494
研究機関東京都市大学

研究代表者

岩田 遵子  東京都市大学, 人間科学部, 教授 (80269521)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード遊び保育 / 集団性 / 保育者の「見え」 / リズム共有 / 身体知
研究実績の概要

遊び中心の保育を実践する際に、教師(保育者)がクラスの幼児集団を見取る方法論を唯一持ち得ている小川博久の「遊び保育論」は、製作コーナーで作る行為をモデルとして行いながら、それと同時に室内で展開される3~5つの複数の遊びを同時並行的に見取り、各遊びの援助を考え実行するという<身体知>が要求され、それは保育者にとっては困難なものであるため、この方法の実践は特に新人保育者にとっては必ずしも容易ではない。
今年度はこの<身体知>の内実を明らかにするため、新人保育者と中堅保育者の保育を動画記録とインタビューによって比較分析を行い、次のア)~ウ)の3点が明らかになった。インタビューからは、「遊び保育」に習熟した中堅保育者は製作コーナーに座って作るパフォーマンスを行いながら、ア)室内で展開される複数の遊びの成り行きの同時並行的な読み取りを適確に行っている。イ)遊びそれぞれの読み取りだけでなく、室内で展開される遊び全体を俯瞰し、遊び相互の関係性を読み取っている。ウ)遊んでいる子どもたちと保育者が「見る─見られる」関係にあることを自覚している。
ア)~ウ)のような「見え」がどのように作り出されるかを明らかにするため、新人保育者と中堅保育者の保育実践をウェアラブルカメラと俯瞰カメラで記録し、両者の比較分析を行った。中堅保育者は製作コーナーから他の遊びを見る時間が非常に長い(新人保育者は短い)こと、幼児の遊びが保育者から自立的であること(新人保育者は依存的)が明らかになり、保育者が他の遊びを「見る」構えは、幼児の遊び状況と相関関係があり、<身体知>は単に見る技術ではなく、保育状況全体の構成と関連があることが明らかとなった。この実態は、このクラスの保育実践が手遊びやわらべうた遊びを頻繁に行うことによって可能となっていると推測される

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新人保育者の躓きの実態を明らかにするために、中堅保育者と新人保育者のインタビューと保育実践の動画記録(俯瞰カメラの動画記録とウェアラブルカメラの動画記録)の分析を行い、新人教師の陥りやすい傾向(個別的関与、言語的統制、集団を見取れない)とそのためにクラスの秩序が維持されなくなる傾向が強まる実態を実証的に明らかにすることができた。「遊び保育論」の実践における教師の躓きの実態の一部を明らかにすることができた。また、動画記録分析から、手遊びやわらべうた遊びによるリズム共有や同調の度合いの高さが、子どもたちの集団性を高め、そのことが、保育者の「見え」を作り出していると予測されることも、明らかにされる可能性が高くなった。

今後の研究の推進方策

1)手遊びやわらべうた等によるリズム共有の蓄積によってクラス集団の凝集性が高まることによって、遊び場面における教師のまなざし(視線の動き)がどのように修正されるか(自分の近くの幼児や個しか見られない状態からクラス全体を俯瞰できるようになると予測される)を明らかにする。この目的を達成するために、①新人保育者と中堅保育者の保育実践を、保育状況を俯瞰するカメラと保育者の視線を記録できうるウェアラブルカメラで継続的に記録し、同時にインタビューを継続的に行う。②アクションリサーチによって、新人保育者の「遊び保育」実践を指導し、集会時の手遊びやわらべうた遊びの実践を指導する。①②によって、中堅保育者の「見え」の実態をより明確にすると同時に、新人保育者のクラスの幼児たちのリズム共有度が高められていく過程において、新人保育者の視線の動きと遊びの見取り方の変化を記録し、分析する。
2)1)をもとに、「遊び保育」の実践によく習熟するための教師(保育者)教育のためのプログラムを作成する(ビデオ教材など)。

次年度使用額が生じた理由

保育実践の動画記録を分析を全て手作業で行っていたが、初年度後半になって、分析に都合の良い分析ソフト(スタジオコード)があることが明らかとなった。包括ライセンスで年間200,000円かかることが明らかとなり、このソフトを用いることが研究の作業効率を著しく向上させ、より有意義な研究となることが判明した。そこで初年度の費用を少しでも倹約し、次年度使用額として、そのソフトの包括ライセンスを取得するよう、計画を変更したため。

次年度使用額の使用計画

分析ソフト(スタジオコード)を購入し、保育実践における保育者の視線の動きと、幼児たちの動きをコードによって分類する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] 保育実践における手遊びの意義─「保育文化」としての手遊びの重要性2017

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子
    • 雑誌名

      東京都市大学人間科学部紀要

      巻: 8 ページ: 24~36

  • [学会発表] 保育者の「身体知」獲得におけるウェアラブルカメラの可能性(2);─保育者の「見え」の成立を可能にする条件─2017

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子
    • 学会等名
      日本保育者養成教育学会第1回大会
    • 発表場所
      白百合女子大学
    • 年月日
      2017-03-05 – 2017-03-05
  • [学会発表] 保育施設に於ける遊び集団の凝集性は如何にして生成するか─「遊び保育論」の批判的検討─2016

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子、小川博久
    • 学会等名
      日本教育方法学会第52回大会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-10-01 – 2016-10-02
  • [学会発表] 現代において「子ども社会」の再生は可能か─保育施設における子ども集団の創成に向けて─2016

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子、小川博久
    • 学会等名
      子ども社会学会第23回大会
    • 発表場所
      琉球大学(沖縄県中頭郡)
    • 年月日
      2016-06-04 – 2016-06-05
  • [学会発表] 保育実践における手遊びの意義(2)─言葉遊びの身体的形象化2016

    • 著者名/発表者名
      岩田遵子
    • 学会等名
      日本保育学会第69回大会
    • 発表場所
      東京学芸大学(東京都小金井市)
    • 年月日
      2016-05-07 – 2016-05-08

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi