研究課題/領域番号 |
16K04497
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
水原 克敏 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特任教授 (00124628)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 文部省実験学校 / 系統主義教育 / 習得率 / 学力論 / 形態心理学 / ゲシュタルト心理学 / 青木誠四郎 / コンピテンシー |
研究実績の概要 |
本研究は、「1947年以降の教育課程の基準と幼・小・中・高のモデル・カリキュラムに関する歴史的研究」で、2017年度に進めた第1の仕事は、文部省実験学校の資料収集と整理分析したことである。前年度まで、『戦後改革期文部省実験学校資料集成』(第Ⅰ期)全9巻を刊行したが、これに引き続いて、第Ⅱ期全6巻を2017年9月に刊行した。それは、1951年学習指導要領改訂以降1958改訂に至る過程の文部省初等実験学校の研究報告書及び研究発表要項で、全教科に共通しているのは、教科内容の習得率を高めるための系統的な内容・方法の研究で、経験主義から系統主義教育への転換を示している。 第2は、経験主義教育課程の学力観の追究である。それぞれの実験学校で目指している教育の根底にある学力論は、どのような系譜のそれであるのか、それは「形態心理学」(ゲシュタルト心理学)の理論によることを明らかにした。先行研究では、もっぱらプラグマティズムの経験主義批判が中心に展開されてきたが、その時代の基礎理論として「形態心理学」に依拠していたことは取り上げられてこなかった。本研究では、学習指導要領の中心的起草者である教育心理学者・青木誠四郎に注目することで、「1947年学習指導要領の学力論ー経験主義カリキュラムと形態心理学との接合-」(早稲田大学教育学研究科紀要 2017年3月)をまとめた。 第3に、2017年3月に改訂された新学習指導要領についても、「教育課程政策の原理的課題―コンピテンシーと2017年学習指導要領改訂―」(日本教育学会『教育学研究』2017年12月)で、改訂の根本にあるコンピテンシー志向を批判的に分析し、教育学会に貢献することができた。また、「2017年学習指導要領への社会的要請の分析と考察―教育関係団体等からの意見表明を対象に―」(早稲田大学大学院教職研究科紀要、2017年3月)もまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「1947年以降の教育課程の基準と幼・小・中・高のモデル・カリキュラムに関する歴史的研究」をテーマに、順次、各改訂の意味をモデル・カリキュラムを通して明らかにしていいるが、順調に進めている。理由の第1は、不二出版より資料の刊行が可能となったことで、体系的に整理することができたことである。その結果、『戦後改革期文部省実験学校資料集成』(第Ⅰ期)全9巻に続いて、第Ⅱ期全6巻が2017年9月に刊行できた。 理由の第2は、経験主義教育課程の学力観を追究した結果、「形態心理学」(ゲシュタルト心理学)の理論によることが明らかにがなったことである。これは想定以上の成果で、先行研究では、もっぱらプラグマティズムの経験主義批判が中心に展開されてきただけで、その時代の基礎理論として「形態心理学」に依拠していたことは取り上げられてこなかったのである。本研究では、学習指導要領の中心的起草者である教育心理学者・青木誠四郎に注目することで、「1947年学習指導要領の学力論ー経験主義カリキュラムと形態心理学との接合-」(早稲田大学教育学研究科紀要 2017年3月)をまとめることができた。 理由の第3に、2017年3月に改訂された新学習指導要領について、日本教育学会から執筆の指名を受けるという機会が与えられたことで、これまでの研究成果を生かして、「教育課程政策の原理的課題―コンピテンシーと2017年学習指導要領改訂―」をまとめ、改訂の根本にあるコンピテンシー志向を批判的に分析し、教育学会に貢献することができたことである。
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今後の研究の推進方策 |
「1947年以降の教育課程の基準と幼・小・中・高のモデル・カリキュラムに関する歴史的研究」がテーマであるが、さしあたり、戦後改革期に絞って、現代日本の教育課程の確立過程をまとめたいと考えている。その場合、学習指導要領の制定趣旨だけでなく、モデル・カリキュラムづくりで、どのような摸索による実践的追究があったのか、その根本にある原理はどのようにとらえることができるのか、これを明らかにしたい。そうすることで、現代日本の教育課程の原型の構造を捉えることができると考えている。 なお、収集した資料との関係で、小学校教育が中心であるが、可能な限り、初等・中等教育全体を視野に置きたいので、この追究を今後とも続けたい。 そして、新たに改訂学習指導要領が2017年3月と2018年3月に出されたので、この内容分析と同時に、モデル・カリキュラムの分析も続けることで、日本の教育課程政策と実践をトータルに捉える努力もしていきたいと考えている。
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