日本の高等教育においてインスティテューショナル・リサーチ(IR)に注目が集まって10年になる。とりわけ、この5年の間にIR組織への期待はますます高まり、様々な目的・機能を持ったIR組織が多くの大学において設置された。しかし、日本においては大学IRの歴史が浅く、前例が少ないことから、それらの組織においては様々な課題を抱えていることが多い(どのような分析・報告が効果的なのか等)。 そこで、私は、研究期間を通して他大学の担当者との交流あるいは研究会への参加等を通してIR組織の情報を集め研究し、最終年度においては全国の大学・短期大学へのアンケート調査(悉皆調査)を実施した。そして、現在のIR組織の実態、課題、さらに課題克服方法等を整理し明らかにした。 他方、分析方法のイメージが欠如しているという大きな課題があることから、教学データの効果的な分析手法についての研究をしながら所属大学において行ってきた実践について仮想データを用いたり、上記調査結果の集計・分析において適用したりしてまとめた。 (私が研究によって明らかにした)現在のIR組織の実態、特徴、課題、課題解決の方法、そして、教学データの分析方法(統計的手法)の紹介は、歴史が浅い日本の大学IRの活動を促進し、大学の質の向上に寄与することが期待できる。 なお、成果の公表に関しては現状不十分であることは否定できない。そのため、今後、アンケート調査結果をもとにした論文を2本作成し、また統計的手法だけでなく得られた諸結果も所属大学から承認を得られた範囲内で、学会発表等で随時公開してゆく予定である。
|