研究課題/領域番号 |
16K04510
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
谷 美奈 帝塚山大学, 全学教育開発センター, 准教授 (60582129)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パーソナル・ライティング / 学びの主体形成 / 自己省察 / 自己・他者・社会認識 / パーソナル・ナラティブ / セルフオーサーシップ / 自己の再帰的プロジェクト / 実存的な学び |
研究実績の概要 |
パーソナル・ライティングの教育方法の特徴は、自己省察(自己と対象の「掘り下げ」と「とらえ返し」)といった思考方法に主眼が置かれていること、および単なる文章作成の技術的向上にとどまらない、他者と表現行為を交換すること、が認められた。また、このような思考と表現者相互の関係作りによって、学生は粘り強い推敲と思考の習慣が身につき、書き手としての「自己」が「他者」や「社会」に開かれた存在として変容し「学びの主体」へと形成されることが明らかになった。 さらに、パーソナル・ライティングを受講した元学生への追跡調査を実施したところ、パーソナル・ライティングの実践には「学生の自己形成史を促進する学びの構造」が存在することと、この構造の働きによって、学生の「学びのモチーフ(動機とテーマ)に連繋する自己形成史」と「人生のモチーフ(動機とテーマ)に連携する自己形成史」が促進され、それらは卒業後の人生にも影響していることが明らかになった。また、これらの研究結果を得るために、大学教育研究においては後発とされている質的研究方法(インタビューによる学生の追跡調査)にも工夫を凝らした。 これらの研究成果の一端が、2018年6月に大学教育学会において奨励賞を受賞した。また、2019年3月の大同大学FD講演会では「『書くこと』『学ぶこと』という視点から大学教育を考える」というタイトルで講演(招待)を行った。加えて、パーソナル・ライティングの具体的な教育方法の拡張のためのワークショップも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であった(1)大学生の学びの主体形成を促すパーソナル・ライティングの具体的指導方法を開発・実施すること、(2)主に文学部の初年次教育分野で開発されたパーソナル・ライティングを他分野や他大学に応用したり、実施の可能性を高めたりすることによって、その拡張を図ること、(3)それを通じて、大学の種別や分野を問わないパーソナル・ライティングの理論化を行うこと、を達成することがおおよそできた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究目的がおおよそ達成できたため、残りの一年間でこれらの成果を書籍化(単著)していく。
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