本研究を通じて得た知見によって、台湾で展開された植民地教育を通じて形成された個々の人々の教育経験が、当時の教育制度や教育内容といった一見して「わかりやすい」ものだけではなく、学校行事や「学校文化」といった人々の生活に根差した要素によって形成されたものであることがわかった。 こうした具体的な教育経験が個々の人々のなかに蓄積されていることを知り、その内実についての知見を蓄積することによって、植民地教育および植民地統治をめぐる相互理解と対話の方法を具体的かつ現実的に構築することができ、現代社会における旧宗主国と旧植民地諸地域のあいだに存在する社会的分断を乗り越えることが期待される。
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