本研究の目的は、従来ブラックボックス化されていた教育実習について、一般大学学部の教職課程の学生が中学校で実施するそれに焦点をあて、教育実習中のいかなる要因が教員としての資質能力の形成、あるいはその阻害に影響を与えるのかを明らかにすることにある。要因として、学校の雰囲気や教育実習中に関わる他者(指導教員、指導教員以外の教員、他の教育実習生、生徒)との関係性に注目している。 平成30年度は、以下の2点を行った。1点目は、教育実習の観察である(平成28年度からの継続)。対象は、公立中学校(1校)。教育実習の実態をとらえるために、2つの視点で観察を行った。1つ目は、教育実習の実施状況である。授業実習やHRでの取組、さらには休憩時間、放課後の活動について情報を収集した。2つ目は、実習中の他者との関わりである。指導教員、指導教員以外の教員、生徒、他の実習生とどのように関わっているかを観察した。他の実習生との関わりは前年度の教育実習観察で確認できなかったため(実習生が一名だったため)、特に注目した。 2点目は、質問紙の作成と調査、分析である。教育実習の観察で得た知見をもとに、教育実習の内容・実態(実習校の属性・実習に関する活動内容・授業実習の実施状況・SHR・LHRの実施状況・指導教員の属性・授業実習以外の取組・教育実習に向けた準備状況)、教育実習の効果(授業に関する能力、社会人として必要な能力、教員として必要な能力がどの程度身についたか)、教育実習校の様子・関わる他者(教育実習校の教員の様子・他の実習生、指導教員、指導教員以外の教員、児童生徒との関係)、学校体験活動について尋ねる質問紙を作成した。調査では全国の29大学学部の協力を得た。調査の結果、一般大学学部の教職課程の学生が実施する教育実習の実態の多様性と教育実習を通して身につける能力(教育実習の効果)のばらつきを明らかにした。
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