(1)平成30年7~8月にかけて、平成30年3月にドイツ共和国ザールラント州で行った若手サッカー審判員の養成システムに関する面接調査及び平成30年5~6月に東京都江東区の2つの相撲部屋を訪問して行った行司の養成に関する面接調査のデータを、主にメンター制度の効用に注目して整理した。メンター制は若手教員に対する専門職倫理教育の一環としても採用されているが、本調査では他の専門職よりも公正さが厳しく求められる審判員や行司の倫理的な自律性がメンターとの長期に渡る関わりの中でどのように養われていくのかを分析した。
(2)平成30年9月18日~21日にかけて、香港のIvey Business Schoolで開催された「ケース・ティーチング&ライティング」ワークショップを受講し、修了証を取得した。ケースメソッドの手法は日本においても技術者倫理教育や教職倫理教育に導入されているが、ケースメソッド授業を効果的に展開できるインストラクターを養成する具体的なプログラムは未だ確立されていない。本ワークショップを受講したことで得た膨大な資料(英語版)を翻訳・分析することで、研究者倫理教育プログラムの中で設定されるケース・ティーチング授業を、ケースメソッドの専門家でなくてもある程度は展開できる「手引き」が作成できる。
(3)平成30年9月~平成31年2月にかけて実施した小山工業高等専門学校5年全学科生を対象とした「人間と科学Ⅱ(倫理学)」の授業において、前年度の問題点を改善したポートフォリオを導入した。具体的には、前年度は学生個々人に任せていた課題分析過程で収拾した資料について統一化を図り、共通のワークブックとして出版できる下地を作った。ただ受講者数が20名に満たなかったため、ポートフォリオをより手軽に作成し、そのチェックが容易にできるワークブック形式の冊子とする際の問題点をすべて洗い出せたとは言えない。
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