研究課題/領域番号 |
16K04522
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宋 美蘭 北海道大学, 教育学研究院, 非常勤研究員 (70528314)
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研究分担者 |
河野 和枝 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (00438350)
若原 幸範 稚内北星学園大学, 情報メディア学部, 准教授 (80609959)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 韓国の代案学校 / 都市型代案学校 / 農村型代案学校 / ジェチョンガンジー学校 / 新しい教育社会の構想 / 人生学校 / 生き方と学び / 地域と学校 |
研究実績の概要 |
本科研の2年目である2017年度では、前年度に残された課題を踏まえて、韓国の代案学校調査をソウル市にあるハザ作業場学校、ソンミ山学校の調査を行い、農村型代案学校は堤川(ジェチョン)ガンジー学校を新たに調査することができた。今回の調査で明らかにされたことは、(1)ハザ作業場学校は単なる職業訓練学校ではなく、人生を自分と仲間と協同(互いに支え合い、そこから学びを紡ぎだす)作業を創りながら自分の道を描く「人生学校」のような特徴が垣間見られた。(2)ソンミ山学校は、子どもたちの生きる要素として、「遊び」と「労働」を非常に重視されていたことがわかった。本校は都会に位置していることから「遊び」と「労働」が実現される場が限定され、両者が豊かに実践される空間づくりが今後の課題であることが分かった。(3)堤川ガンジー学校は中高統合課程で、全寮制の非認可型代案学校である。この学校の特徴は、地域と共にある学校を掲げ、生き方と学びが一体化される教育を地域の中で実現することを目指している。 今年度は学校訪問調査だけではなく、1)、これまでに訪問した代案学校の校長先生5人と「ミンドゥレ」出版社の編集長と共に、「韓国の代案教育・学校の過去・現在・未来」というテーマで座談会を開いたことも大きな成果の一つであった。また、2)、大田市にある、韓国建信大学院大学の代案教育学科教員である、河・テウク氏をお招きし、「韓国の代案教育制度と歴史」というテーマで報告していただき、北大にてセミナーを開いたことも成果である。また、3)、11月は「韓国の代案学校~『もうひとつの学校』における多様な学びの保障」というテーマで公開研究会を行い、4),2月は、プルム学校の関係者との交流を北大にて持つことができた。さらには、5)、オルタナティブ教育共同研究会で発表する機会が与えられ、日本の状況と比較する視点を獲得することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は、とりわけ、代案教育に関わる研究者及び実践家との実践研究交流を日韓両国において、複数持ったことが大きな成果であった。(1)8月8日は、韓国建信大学院大学、河・テウク氏をお招きし、「韓国の代案教育制度と歴史」というテーマで報告していただき、研究交流を実施した。(2)9月6日は、ソウルハザセンターにて代案学校の校長先生5名と本研究の共同研究者及び北大の宮崎隆志氏とともに「韓国の代案教育・学校の過去・現在・未来」というテーマで座談会を開き、宮崎氏からは代案教育とSocial Pedagogy(SP)との関連でミニレクチャーをしていただいた。代案教育実践はSPの実践と非常に類似していることが共有され、地域・子どもたちを成長させる代案教育実践性をSPとの関連で展開する重要性についても確認することができた。(3)11月19日には、「韓国の代案学校~『もうひとつの学校』における多様な学びの保障」というテーマで、市民及び研究者向けの公開研究会を札幌L-プラザにて実施した。ここでは日本のフリースクールを自ら実践している実践家や過去に教師の経験を持っている方も参加され、日本の状況と共有することができ、日韓の比較視点も獲得することができた。(4)2018年2月は、韓国のプルム学校の卒業生、教師、地域の実践家と北海道の実践家との交流を実現した。2月27日は、プルム学校及び地域の実践に学ぶ実践・研究会を北大教育学院大会議室にて開くことができ、日韓の実践・研究をこれまで以上に深めることができ、今後、日韓の両国の実践家交流の可能性を見出すことができた。(5)2018年2月28日は、「オルタナティブ教育共同研究会」が大阪府立大学I-siteにて開催され、「韓国の代案教育運動はいかにして生まれたのか?」というテーマで発表し、本研究の自己研鑽を得る機会が与えられたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
本科研最終年度である2018年度は、残された課題について補足調査を行い、データ収集と研究の論点と課題を明らかにし、それらを報告書にまとめると同時に、とりわけ、本年度は、今までの研究成果をひとつの集大成として、「韓国の『もうひとつの学校』~学校型教育を超えて(仮)」の本を出版する計画で進める予定である。さらに、日本の調査も充実に遂行していき、日韓の比較の視点を獲得していく。これらの成果を日韓両国の学会発表及び論文投稿にも積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年、前年度までに残された課題を継続調査が必要のため、追加調査の費用が生じている。具体的には、韓国のソウル、忠清南道、忠清北道、釜山市の都市と農村の代案学校調査を行い、その集大成として報告書ならびに本を出版する作業を進めたい。なお、日本の先進的な実践を実施している学校をも調査を実施し、これらの成果を学会報告も積極的に行う。そのために諸経費は必要である。
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