研究課題/領域番号 |
16K04525
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
鈴木 久米男 岩手大学, 教育学研究科, 教授 (50733937)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カナダ・オンタリオ州 / 学校及び教育行政管理職の養成・研修 / 校長の専門職基準 / 校長会 |
研究実績の概要 |
本研究は、オンタリオ州における学校及び教育行政管理職の養成・研修システムの実態と評価を日本の実態との比較検討を踏まえて行う。そのために、3カ年にわたり次の3つの段階による研究計画を実施している。一年次である平成28年度は、オンタリオ州における学校及び教育行政管理職養成のための研修プログラムと専門職基準との関係及び、養成のための研修の実態把握さらに、国内における校長の研修に関する実態を把握することの3点であった。 研究の第一は、オンタリオ州における学校管理職等の専門職基準と研修プログラムの関係及び研修の分析である。学校及び教育行政管理職に求められる資質能力による専門職基準と学校管理職等の養成・研修プログラムとの関連を、訪問調査及び諸資料に基づいて分析した。さらに、養成研修の実施プロセスを把握するために、OCT:オンタリオ州教員連盟やOPC:オンタリオ州校長会等の研修実施機関への訪問調査や資料の収集を行い、考察を加えた。 第二は学校管理職等の養成・研修の実態を明らかにすることである。オンタリオ州における学校及び教育行政管理職の養成・研修が実際にどのように行われているのかを明らかにするために、実施主体であるOCT及び研修の実施機関であるOPCへの訪問調査を実施した。さらに、校長養成のための研修講座であるPQP及び教育行政管理職の養成講座であるSOQPを受講し、また受講者への調査を行うなどして実態と課題を明らかにした。 第三は、国内における校長の養成・研修の実態を把握することである。国内の都道府県教育委員会や教職大学院などの学校管理職の養成・研修が行われている状況を、専門職基準とどのように関連づけているのかという視点に基づいて実態調査を行った。さらに、国内の校長会に対する調査も行い校長の研修への取り組みにおける役割なども明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、国内の学校管理職の養成・研修の実態把握とともに、オンタリオ州への訪問調査を実施した。国内の学校管理職の養成・研修の実態については、校長の研修に関してA県校長会への調査を基本に全国校長会との関連を踏まえて研修の実態と課題について考察した。 オンタリオ州への訪問調査については、平成28年10月11日から21日にかけて実施し、オンタリオ州教育省、トロント地区教育委員会、オンタリオ州校長会等の教育関係機関を訪問した。訪問では、学校及び教育行政管理職の養成プログラムであるPQP及びSOQPの研修を実際に見学し、担当者へのヒアリングなども実施した。その中で、学校及び教育行政管理職の専門職基準と研修内容との関連や研修の実施方法などを調査により明らかにした。 また、それらの研修を主幹しているOCT:オンタリオ州教員連盟及び研修実施機関であるOPC:オンタリオ州校長会の本部を訪問し、養成プログラムの実施プロセスに関する調査を実施した。さらに、2年次の研究内容に関連する州や地区として学校及び教育行政管理職育成のための取り組みに関する事前調査として、OME:オンタリオ州教育省やTDSB:トロント地区教育委員会への訪問も行い、取り組みの状況を調査した。 国内における校長の研修の実態については、A県を調査対象とし、研修の実態をOJTとOffJTの二つの視点から考察した。その結果、多くの校長には、OffJTの機会はほとんどないという実態が明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究は、カナダ・オンタリオ州における学校及び教育行政管理職養成のための研修プログラムの質保証に対する取り組みと教育行政の関わりを明らかにすること、さらに国内の学校管理職養成の実態を把握することの3点である。 第一の課題である研修プログラムの質保証については、オンタリオ州における様々な教員研修の基本構想を立てているOCTに着目し、どのようなプロセスにより学校管理職等の専門職基準と研修プログラムの内容との整合性を図っているのかを明らかにする。そのために、学校管理職等の養成・研修の基本構想を立てるOCTとOPC(オンタリオ州校長協会)やOISE(トロント大学教育学部)等の研修実施機関双方の機関を訪問し、聞き取り調査を行う。このことにより、認証のプロセスを把握し、設定した資質能力育成のための専門職基準と研修プログラムの内容との整合性を図る手順の実際とともに、実施上の課題も把握する。 第二の課題である学校及び教育行政管理職研修に対する行政機関の関与の実態把握である。オンタリオ州においては、学校及び教育行政管理職の養成・研修に地区教育委員会や教育省などが関わっている状況がみられるが、詳細は不明である。地区教育委員会や州教育省等の教育行政機関がどのようなプロセスで学校管理職の養成、研修に関わっているのかを、州教育省やトロント地区教育委員会等を訪問して実施状況の調査を行い、実態とともに課題を把握する。 第三の課題である国内の管理職養成と教育行政機関との関わりの把握である。東京都や鳥取県などの都道府県教育委員会などによる学校及び教育行政管理職の養成、研修に対する関わりを、訪問調査等により明らかにする。さらに、状況によっては教職大学院の調査も実施する。これらの成果を踏まえ、オンタリオ州と国内での学校管理職養成の取り組みを比較検討することにより、現状と課題を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は外国調査として、カナダ・オンタリオ州の州教育省やオンタリオ州教員協会などの教育関係機関への訪問は実施できたものの、国内調査については十分でなかったことである。また、英文資料の邦訳については、自分自身で処理したことから、残金が出てしまったことである。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、カナダ・オンタリオ州及び国内教育関係機関への訪問調査を計画的に行うための旅費や必要な物品費等に使用する。
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