本研究の目的は、質の高い教育実践の実現を目指して学校及び教育行政管理職や教員の養成・研修に取り組んでいる、カナダ・オンタリオ州の教育システムやその実践状況を明らかにすることである。 本研究課題設定の理由の第一は、我が国で進められている校長や教員の育成のための指標に基づいた教員養成・研修システムに関する先進事例の収集である。さらに、教員養成や研修の実施主体となる組織の実践状況を調査により明らかにし、我が国のシステムと比較するすることにより、オンタリオ州の独自性を示すことともに、参考事例とする。 本研究において、カナダ・オンタリオ州の教員等の養成・研修と教育関係機関の役割を明らかにした。具体的な成果として、次の3点が挙げられる。第一に、教員養成・研修の実施システムを明らかにしたことである。その中で、オンタリオ州において教員養成・研修のシステムは、オンタリオ州法に定められていることや、教員等の養成・研修は第三者機関であるOCT(オンタリオ州教員連盟)が主管し、大学や校長会等の様々な教育関係機関が実施機関となっていること等を示した。 第二は、研修を主管しているOCTと他の教育関係機関との関係を明らかにしたことである。その中で、オンタリオ州において、教員養成や研修の基本となる事項を決定している機関は、行政や民間組織とは異なる第三者機関であるOCTであること。さらに、教育行政に関するすべの業務を担当する機関はOMEであり、各地区の行政機関は地区教育委員会であること等を示した。 第三は、教員養成・研修の質保証のためのシステムを明らかにしたことである。その中で、オンタリオ州においては、教員等の養成・研修における質保証のためのシステムが存在すること。それは、教員や学校管理職等の養成・研修において、あらかじめ身に付けるべき資質能力を専門職基準として作成していること等を示した。
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