本研究では、保育者が保育職として再就職するプロセスについて、離職の要因との連続性を踏まえた上で、そのプロセスにおける経験と出来事について明らかにすることを研究目的とした。分析の結果、就職してから離職し、再就職するプロセスにおいて4つのネガティブな感情を生起させ、それらの要因となった経験や出来事を解釈することで感情を制御していることを示唆した。さらに、その感情を制御する方略を考察したところ、保育者が離職する前に保育で子どもと一緒にいることの楽しさを感じた経験と、次の職場の人間関係への不安を払拭した経験が、保育職へ再就職する要因となったことが示された。 さらに、本研究では、「子育てをしながら保育者に再就職する」経験を持つ保育者の経験・出来事にも着目した。そして、高校生の進路選択から就職・離職・再就職の経験に至るまでのプロセスを明らかにし、保育者のキャリア形成の在り方について検討を行った。その結果、(ⅰ)結婚することによって生じる状況の変化に対して、自らのキャリアを変えることによって適応しようとするために「離職」が促進される。(ⅱ)子どもがある程度大きくなって手が離れ来る際に生起する「子育ての一段落感」が「再就職」を促進させたことが示された。 最後に、保育者が就職、離職し、潜在保育士と生きる経験や出来事を明らかにすることで、保育者が潜在化するプロセスを明らかにした。その結果、保育者の潜在化するプロセスにおいて、進路選択と就職活動の2つの分岐点が存在することが示された。とくに、高校から大学進学時の進路選択時において、保育者養成校に進学する以外に、他の進路の選択肢が分岐点として立ち上がってくる経験が示された。そして、分岐点での進路選択に対して後悔するネガティブな感情が、離職する際に、その後の就職活動に強く影響を与えることが示された。
|