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2016 年度 実施状況報告書

幼児期おける美術の前段階のメタファー・表象・スケールの基礎的研究とその教育実践化

研究課題

研究課題/領域番号 16K04533
研究機関埼玉大学

研究代表者

池内 慈朗  埼玉大学, 教育学部, 教授 (10324138)

研究分担者 立川 泰史  東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (10735418)
木村 美奈子  名古屋芸術大学, デザイン学部, 准教授 (50457917)
松村 暢隆  関西大学, 文学部, 教授 (70157353)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードメタファー / 表象 / MI理論 / ミニチュア / レッジョ・エミリア / ハワード・ガードナー / 2E / スケール・エラー
研究実績の概要

幼児期における美術とも呼べない前段階での象徴的(自分の前にないモノや世界を想起し操作する)思考の研究である。ガードナーによれば、メタファー生成・表象理解が将来の創造性にも繋がる非常に重要な時期と指摘されている。研究方向を文脈比較を考慮したものに移ったが代表者は全体の方向付けなどの制御を行った。
1 メタファー生成について本年度は、「メタファーの処理過程」を異年齢集団(小学校)で実施し「視覚的な造形言語」の比喩的処理に働く機能を類型化した。結果、①発想・構想の原基となる総計言語の傾向②イメージ決定を媒介する事象の傾向③造形の初発段階のイメージ構想の傾向④造形言語の表現での関心の傾向⑤比喩的写像の傾向⑥他者表現の理解での経験知の傾向を明らかにした。
2 シンボル理解について基盤作成のモデルの構築に努めた。シンボルの二重性理解での、描画にみられるリアリティを対話に着目し、国際学会で成果発表を行った。シンボルの二重性理解に関する研究、表象について保育学会での自主シンポ(5/7)では「子どもの表現におけるリアリティとは何か」発表と議論をおこなった。
3 メタファー・表象化に溢れるレッジョ・エミリアの28年度研修に参加し、ワークショップ「イタリアの子どもたちが考える日本的なものとメタファー(日本の色:カワイイ色)」を行い、幼児の表象理解と文化文脈の違いによるメタファーの違いについて、アメリカ教育学会においても(1)(2)(3)の研究成果を踏まえたMI理論とメタファー・見立て・文脈について招待発表を行った。
4 シンボルの二重理解の研究の一端として、幼児期の二重表象がその後どのように個性的な発達の道筋を辿るのかを視野に入れるために、ハワード・ガードナーのMI理論の「空間的知能を含め才能と障害を併せもつ2E児のための2E教育」に関して、文脈比較でアメリカの最近研究動向に基づき概念整理を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

メタファー(比喩)の処理過程を想定した題材から得られた①~⑥の成果は、論文発表(査読付き)大きな進歩がみられた。表象の二重性理解に関する研究の一端である子どもの産出した描画から表象からリアリティの移行を考察し、保育学会での自主シンポでは、「子どもの表現におけるリアリティとは何か」研究内容と成果について国際学会において発表と議論を行うことができた。
幼児の表象理解と文化文脈の違いによるメタファーの違いについて、アメリカ教育学会においてもMI理論と幼児の表象理解と文化文脈の違いによるメタファーの違いについて、アメリカ教育学会においても(1)(2)(3)の研究成果を踏まえた「メタファー・見立て・文脈」について招待発表を行うことができた。
幼児期の二重表象がその後どのように個性的な発達の道筋を辿るのかを視野に入れるために、空間的知能を含め才能と障害を併せもつ2E児のための2E教育に関して二重表象研究の可能性の広がりがみられた。少し方向を海外との比較研究、文脈に向い、それらのディスカッションを行うことで深め、28年度の実践・理論構築の方向性を明示できた。

今後の研究の推進方策

平成29年度は、ヴィジュアル・メタファーの生成について、ヴィジュアル・ナラティヴ・アプローチ用いた調査を行う。特に幼児期の言葉による内面表現が未発達な時期の観察・分析に有効である。レッジョ・エミリア幼児学校が行うレッジョ・ナラの調査もナラティヴ・アプローチと重なりを持つの。「文化的文脈」を考慮し、ナラティヴ・アプローチの特定した幼児に問いかけモデルを用いる。幼児の「表象・二重表象」の研究では、幼児期にスケール・エラーが起こる幼児に、「シュリンキング・マシーン(幼児に縮小・拡大できる機械と信じ込ませる)」を制作し、使用して二重表象を必要としない実験を行う。この実験から二重表象理解を「三段階発達モデル」に準じて詳細に分析することで「シュリンキング・マシーン」を用い、新たな条件を付け加えて実験を行うことにより、シンボル理解の発達段階をより明確化する。これらのモデルをもとに、ミニチュアの三次元的なモデルを使用したシンボル理解に関する実験を行い、二重表象機能の発達との関連をみる。 また、引き続き、描画の産出と理解についても二重表象との関連で、理論化したいと考えている。それらの成果をもとに、これまでに構築してきた「映像理解の三段階発達モデル」を修正および拡張し、幼児のシンボル理解の解明につなげたい。さらに2E研究を深め、空間的知能を含め才能と障害を併せもつ2E児のための2E教育に関しアメリカの最近の動向に基づき概念整理、発達障害児童の才能を活かすための実践を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

初年度、計画していた調査の一部が、研究計画ミーティングで分担者と協議した結果、幼児の発達段階で「文化的文脈」を考慮する必要のあることが議論された。本研究の柱となるメタファー、スケール、表象理解の「三段階発達モデル」にも関わる問題である。そのため、文化的背景による発達の違いの調査範囲を拡げ文化横断的調査研究を行う方向に変更になり、メタファー・表象化に溢れるレッジョ・エミリア市幼児学校のメタファー・表象の実調査など当初の費用では執行が難しくなった。

次年度使用額の使用計画

文化的背景による発達の違いの調査範囲を拡げ文化横断的調査研究を行う方向に変更になり、メタファー・表象化に溢れるレッジョ・エミリアの実践の調査などの方法について本年度の費用内で執行を行う。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 自由研究発表Ⅲ部会 (1)-(4)の発表要旨2017

    • 著者名/発表者名
      池内慈朗
    • 雑誌名

      アメリカ教育学会会報(第28回埼玉大学大会)

      巻: No.43 ページ: 12-14

  • [雑誌論文] 子どもの美的体験における比喩的イメージの活用と課題 V - 感性的材料としての「造形言語」について -2016

    • 著者名/発表者名
      立川泰史
    • 雑誌名

      日本美術教育研究論集

      巻: No.50 ページ: 23~34

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 子どもの描画における「体験・表現・リアリティ」 を考える2016

    • 著者名/発表者名
      木村美奈子
    • 雑誌名

      日本保育学会発表要旨集(自主シンポジウム「子どもの表現におけるリアリティとは何か」)

      巻: 50 ページ: 173-173

  • [雑誌論文] アメリカの2E教育の新たな枠組:隠された才能・障害ニーズの識別と支援2016

    • 著者名/発表者名
      松村暢隆
    • 雑誌名

      関西大学文学論集

      巻: 66巻3号 ページ: 143~171

  • [学会発表] 発達心理学を日本から発信する-若手研究者の挑戦2017

    • 著者名/発表者名
      木村美奈子
    • 学会等名
      日本発達心理学会発達心理学研究編集委員会企画(日本発達心理学会第28回大会発表論文集)
    • 発表場所
      広島国際会議場(広島県広島市)
    • 年月日
      2017-03-27
  • [学会発表] 2E教育の動向、意義と可能性2016

    • 著者名/発表者名
      松村暢隆
    • 学会等名
      2016年度日本LD学会公開シンポジウム:発達障害のある児童生徒に対する2E教育の理念による支援
    • 発表場所
      関西大学(大阪府吹田市)
    • 年月日
      2016-12-23
    • 招待講演
  • [学会発表] What kind of reality do children feel about their own drawings?2016

    • 著者名/発表者名
      Minako Kimura
    • 学会等名
      Art learning & creativity: Contemporary issues in formal and informal settings(国際シンポジウム)
    • 発表場所
      東京大学(東京都, 目黒区)
    • 年月日
      2016-11-20
    • 国際学会
  • [学会発表] 2E教育の理念・方法の新しい枠組み2016

    • 著者名/発表者名
      松村暢隆
    • 学会等名
      日本LD学会第25回大会(自主シンポジウムJB3:2E教育の理念による特別支援の先進的取り組みの基盤)
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-09
    • 招待講演
  • [学会発表] 芸術的認知研究としてのメタファー思考 テーマ:アメリカ教育における芸術的思考と認知研究の動向2016

    • 著者名/発表者名
      池内慈朗
    • 学会等名
      アメリカ教育学会シ 第28回大会公開ンポジウム 埼玉大学大会
    • 発表場所
      埼玉大学(埼玉県, さいたま市)
    • 年月日
      2016-10-22
    • 招待講演
  • [学会発表] 子どもの美的体験における比喩的イメージの活用と課題 V-感性的材料としての言語について2016

    • 著者名/発表者名
      立川泰史
    • 学会等名
      第50回日本美術教育研究発表会(公益社団法人日本美術教育連合)
    • 発表場所
      東京家政大学(東京都板橋区)
    • 年月日
      2016-10-16
  • [学会発表] Toward the construction of a new developmental model explaining children's understanding of external representations〈査読付〉2016

    • 著者名/発表者名
      Minako Kimura
    • 学会等名
      The 31st international Congress of Psychology 387-388
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-07-28
  • [学会発表] 子どもの描画における「体験・表現・リアリティ」 を考える(自主シンポジウム「子どもの表現におけるリアリティとは何か」)2016

    • 著者名/発表者名
      木村美奈子
    • 学会等名
      日本保育学会発表要旨集,(自主シンポジウム「子どもの表現におけるリアリティとは何か」)p.173
    • 発表場所
      東京学芸大学(東京都小金井市)
    • 年月日
      2016-05-07
  • [図書] 美術教育における授業研究のすすめ方 第1章第1節, 第2章第2節,第4章第1節, 第2節(担当)2016

    • 著者名/発表者名
      立川泰史
    • 総ページ数
      43
    • 出版者
      美術教育学会叢書第10号、美術科教育学会編集

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公開日: 2018-01-16  

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