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2017 年度 実施状況報告書

幼児期おける美術の前段階のメタファー・表象・スケールの基礎的研究とその教育実践化

研究課題

研究課題/領域番号 16K04533
研究機関埼玉大学

研究代表者

池内 慈朗  埼玉大学, 教育学部, 教授 (10324138)

研究分担者 立川 泰史  東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (10735418)
木村 美奈子  名城大学, その他部局等, 准教授 (50457917)
松村 暢隆  関西大学, 文学部, 教授 (70157353)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードヴィジュアル・メタファー / 表象理解 / MI理論 / ハーバード・プロジェクト・ゼロ / 空間認識知能 / スケール理解 / ミニチュア / シュリンキング・マシーン
研究実績の概要

幼児期の美術と呼べない前段階での象徴的思考と象徴理解(自分の目の前に無いモノや世界を想起し操作する)、メタファー、スケール理解、MI知能理論、障がい児からの視点と2E教育等の関連性、認知的個性の研究を進めた。児童の個々の認知的特性と子どもの絵画を見る目、象徴理解、絵画表現の関わりや教科学習との関連を詳らかにした。
1.児童の個々の能力特性と子どもの絵画を見る目、象徴理解、絵画表現の関わりや教科学習との関連を明らかにした。
2.比喩的イメージの生成過程において比喩処理を媒介する感性的材料について、小学校異年齢を対象に比較分析を行った。
3.三次元的なミニチュアモデルの実験から、子どもは領域一般的にシンボルの表象性を理解するのではなく、個々のシンボルについて個別に学習すること、また、どのシンボルについても、完全な理解に至るまでにいは、かなりのゆらぎがあり、そのゆらぎは、実は大人がシンボルを実在のごとく楽しむ能力と関連があることが示唆された。
4.障がいの視点から、個人の得意なシンボル・システムの活用について、アメリカ・カリフォルニア州の2E生徒対象の私立学校、メリーランド州モンゴメリー郡公立小中学校での、2E教育(才能と発達障害を併せもつ子どもへの特別支援)プログラムの実践研究の実態調査を進めた。2E生徒は、認知・情緒・社会性の発達の非同期性が大きく、才能・障害特性プロフィールが個性的であるため、得意や興味、等を包括的に把握して、学習の場・集団・材料・方法等を工夫して、個人の得意なシンボル・システムを活用するという、支援の個性化の方法の有効性が実証されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

児童の個々の能力特性と子どもの絵画を見る目、象徴理解、絵画表現の関わりや教科学習との関連を詳らかにした。MI理論の「身体運動的知能」は表現の行為性,「対人的知能」は絵画の感覚的な表現と関係があり絵画表現は学習環境を形成する重要な一要素であるコミュニケーション能力との関わりが深いことが確認された。子どもは知能の領域ごとにシンボルの表象性を理解するのではなく、個々のシンボルについて個別に学習することが明確となった。
比喩的イメージと感性的内容の媒材となる造形言語の関連を観察する実践研究を小学校中・高学年を対象に行った。小学校4年の比喩的イメージ生成では対象を「形」で捉えようとする傾向が高く、造形体験が進むにつれ「色」を比喩的写像を試みるように進む。「色」への関心は表現活動や鑑賞活動まで継続する傾向がある。比喩的イメージと媒材となる造形言語の関連において、小学校4年生は、高次の類推活動、及び「色」が語り得る質的な意味深さを認める力は発達の途上段階と認められる。小学校6年生では、比喩的イメージを表現する「色」や「形」の組み合わせ以上に、描画手順(地と図の構成)「雰囲気(比喩の相貌的な効果)」を目指す傾向が芽生える。
三次元的なミニチュアモデルである人形を使用し、幼児期の子どもが、人形を人の象徴として理解しているか、もし理解していないとすれば人形をどのように概念化して理解しているかを実験的に調べ、特に、子どもが人形に心的機能を付与するか否かを取り上げ、写真や映像の表象性を理解するようになる発達過程との関連をみた。
2E生徒は、認知・情緒・社会性の発達の非同期性が大きく、才能・障害特性プロフィールが個性的であるため、得意や興味、等を包括的に把握して、学習の場・集団・材料・方法等を工夫して、個人の得意なシンボル・システムを活用するという、支援の個性化の方法の有効性が実証された。

今後の研究の推進方策

平成28年度、平成29年度の研究成果を基に象徴的思考と象徴理解、メタファー、スケール理解、MI知能理論、障がい児からの視点と2E教育等の関連性の研究をさらに進める。
幼児の絵画における比喩の処理過程について調査分析を行い、象徴的思考と象徴理解、メタファー、スケール理解についてMI知能との関係性を「空間認識知能」、「身体運動的知能」と表現の行為性,「対人的知能」と絵画の感覚的な表現とともに文化的文脈を踏まえたメタファー・表象化に溢れるレッジョ・エミリアの研究成果を踏まえたこれまでにない視点から幼児教育に相応しい表現分野の創造性育成のモデルの分析を行なう。
「ヴィジュアル・メタファー」のこれまでの成果を分析精緻化するためイメージの比喩的生成過程について異年齢まで観察を広げ、視覚的・感性的内容の媒材となる造形言語の関連を観察し、言語的・身体的な経験や環境との関連を調査する。
幼児のみならず、縮小されたもの、ミニチュアに惹かれる大人も調査対象とし、スケール感覚・表象理解の 傾向の明確化を行いMI知能との関係性を見出す。幼児の表象・二重表象の研究では、三次元的なミニチュアモデルである人形を使用し、前年度に引き続き、シュリンキング・マシーンを使用して幼児期のスケール・エラー と、スケール・表象理解の発達段階をより明確化する。シンボル理解全般を説明するモデルへと展開する。これまでの、ヴィジュアル・メタファーの生成についてさらに二重表象の理解など研究成果を踏まえ、研究の全体をまとめていく。2E教育で重視される、子どもによって異なる得意・苦手なシンボル・システムの使い方の包括的評価方法について、アメリカの実践から日本の特別支援へ導入できる要素を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

レッジェ・エミリアの現地視察参加は30年度の予定であったが、文化的文脈を踏まえたメタファー・表象化に溢れるレッジョ・エミリアの授業実践を分析し2年間の研究成果を踏まえたこれまでにない視点から幼 児教育に相応しい表現分野のモデルの分析を行なった。今年度に様々なタイプの幼児教育施設を視察し比較するために参加が不可欠であり、当初計画していなかった旅費と研修費用が嵩んでしまった。そのため幼児期のスケール・エラーとスケール・表象 理解のための三次元的なミニチュアモデルのスケール理解の実験のためのシュリンキング・マシーンの作成に予算が不足した。「シュリンキング・マシーン」を作成するための材料費、制作および 実験補助の人件費が不足し、今年度中にマシーンを完成させ、現地視察で得た比較分析を行うため前倒し使用申請を行った。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 児童の絵画表現にみられる認知的特性についての考察 :MI理論とIQを分析の手がかりとして2018

    • 著者名/発表者名
      池内 慈朗
    • 雑誌名

      『美術教育学研究』 大学美術教育学会

      巻: 第50号 ページ: 41-48

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 比喩的写像によるイメージの生成と操作2018

    • 著者名/発表者名
      立川 泰史
    • 雑誌名

      東京造形大学大学院研究紀要『造形研究』東京造形大学

      巻: No.1 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] レッジョ・エミリアでのオロロッジョ(Orologio)に見られる領域間のメタファーの転移 :;MI理論からみたオロロッジョの領域間の学習2018

    • 著者名/発表者名
      池内 慈朗
    • 雑誌名

      『レッジョ・エミリア2007年 研修報告書』 子ども教育立国(NPO)

      巻: No.1 ページ: 16

  • [雑誌論文] レッジョ・エミリアでの「レッジョ・ナラ」のナラティブによる表象理解の入り口2018

    • 著者名/発表者名
      池内 慈朗
    • 雑誌名

      『レッジョ・エミリア2007年 研修報告書』 子ども教育立国(NPO)

      巻: No.1 ページ: 20-21

  • [雑誌論文] アメリカ教育学会第28回大会(埼玉大会)公開シンポジウム報告 現代アメリカにおける美術教育の動向 ;ハーバード・プロジェクト・ゼロ、鑑賞教育、博物館教育から見る展望2018

    • 著者名/発表者名
      池内慈朗
    • 雑誌名

      『アメリカ教育研究』アメリカ教育学会編 東信堂

      巻: 28号 ページ: 153-155

  • [雑誌論文] 子どもの美的体験における比喩的イメージの活用と課題 Ⅴ ― 感性的材料としての「造形言語」について ―2017

    • 著者名/発表者名
      立川 泰史
    • 雑誌名

      『日本美術教育研究論集』 (公益社団法人)日本美術教育連合

      巻: No.50 ページ: 23-34

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 2E教育の動向、意義と可能性2017

    • 著者名/発表者名
      松村暢隆
    • 雑誌名

      LD研究

      巻: 26巻3号 ページ: 303-308

  • [学会発表] 美術教育における学力分析~ルーブリックを用いた鑑賞学習の効果測定~2018

    • 著者名/発表者名
      池内慈朗(他4名 奥村高明 宮本友宏 一條彰子 東良雅人)
    • 学会等名
      美術教育学会第34回 滋賀大学大会
  • [学会発表] 幼児期の自己映像理解の発達―自己の偏在的理解から統合的理解へ2018

    • 著者名/発表者名
      木村美奈子
    • 学会等名
      日本発達心理学会第 29 回大会(ラウントテーブル「幼児期におけるシンホル的表象の発達―ふり・描画・自己映像理解の発達を通して―」
  • [学会発表] 子どもの表象理解とメタファー理解2017

    • 著者名/発表者名
      池内慈朗
    • 学会等名
      科学研究費 公開シンポジウム「アートを見る目 子どもの目」
    • 招待講演
  • [学会発表] Twice-exceptional education in Japan Second 2E2017

    • 著者名/発表者名
      MATSUMURA, Nobutaka
    • 学会等名
      Second 2E Symposium: Vision and Leadership in 2E Education
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 「子どもの美的体験における比喩的イメージの活用と課題 Ⅵ2017

    • 著者名/発表者名
      立川泰史
    • 学会等名
      第51回 日本美術教育連合
  • [学会発表] 自己解放の喜ひは学ひを促進させるかー算数の学習と図工の 学習の比較を通して2017

    • 著者名/発表者名
      木村美奈子
    • 学会等名
      日本教育心理学会第 59 回総会
  • [図書] 特別支援教育の到達点と可能性(分担:才能に関する研究動向)2018

    • 著者名/発表者名
      松村暢隆
    • 総ページ数
      総304(196-199)
    • 出版者
      金剛出版 柘植雅義(編)
  • [図書] 幼稚園・小学校教育実習―学びの連続性を通して―2018

    • 著者名/発表者名
      立川泰史
    • 総ページ数
      総151(75-82)
    • 出版者
      大学図書出版 立川泰史・中田範子・齋藤義雄(編著)

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公開日: 2018-12-17  

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