本研究の目的は、国内においてユネスコ活動(またはESD活動)に取り組んでいる青年を調査対象としユネスコ活動とキャリア形成の関連要素を分析することを通して、ユネスコ活動が持つ教育的意義と可能性を明らかにすることであった。そこで、本研究では当初、次の3点を研究課題として設定した。(i)ユネスコ活動に取り組む 青年のユネスコ活動への参加促進要因の分析。(ii) ライフヒストリー的アプローチによるユネスコ活動とキャリア形成の関連要素の分析。そして、(iii) (i)と(ii)の成果を統合させ、ユネスコ活動が持つ教育的意義と可能性について明らかにすることを目指した。 これまでの調査を通して、ユネスコ活動に従事している青年たちは、活動形態や参加形態は多様であるものの、活動を通して自己成長や他者との繋がりの実現に意義を見出していることが示唆された。特に抽象的で包括的なユネスコ理念であるがゆえに、多様な活動を作り出しており、異なる活動をしながらも共感的に関わり合い、仲間意識や連帯感を育んでいた。一方で、1950年代と比較をすると具体的な社会問題がプログラムのテーマにあがらず、語られることはなかった。 そこで、教育的意義を質的に描き出すために、ユネスコスクールの卒業生や、卒業後に民間ユネスコ団体やその他の活動団体でESD活動に従事している人を対象としたライフヒストリー調査を試みた。令和元年度は、ユネスコ活動に従事しており、かつ、1950年代にユネスコスクール(ユネスコ共同学校)で教員経験のある人物への聞き取り調査と実践記録からユネスコ活動における教育的意義について考察した。データ処理に関わる時間的限界のため年度内に研究成果を公表するまで至らなかったが、分析結果を資料として次期研究課題へと引き継ぎ追究を進めていく。
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