本年度は、研究成果の総括として、これまで解析を進めてきた教育費・子育て費をめぐる社会保障制度の日本型システムの特質をふまえ、そのもとで起きてきた特殊な教育法現象を分析の対象におき、その様相の解明を行った。分析結果ならびに学会発表等の研究活動ならびに研究成果刊行物は次のとおりである。 第一に、日本型教育財政システムの下では、教育条件整備行政を通じた教育内容統制がすすめられ、この問題は教育法現象としては学習指導要領の法規性の有無をめぐる争いとして展開された。分析結果は、石井拓児「学習指導要領の性格をめぐる歴史的考察と教育法研究の課題」(『日本教育法学会年報』第47号、有斐閣、2018年4月、114-123頁)として示した。第二に、特殊な教育財政システムのもとでは、学校の自律性を強く拘束することとなり、ここに日本型福祉国家をめぐる学説的対立を生じさせてきた。分析結果は、石井拓児「教育財政ガバナンスの構造的変容と学校経営の自律性をめぐる理論的課題」(『日本教育経営学会紀要』第60号、第一法規、2018年5月、16-29頁)としてまとめた。第三に、大学財政・大学授業料分析を進め、とりわけ戦後日本における大学財政システムとして特別予算制度の成立過程とそのもとでの運用実態に着目、日本における大学自治・学問の自由をめぐる法制度論的問題状況を検証した。その研究成果は、民主主義科学者協会法律部会の総会にて「大学自治と財政」をテーマに学会発表を行い(招待)、その後、「新自由主義大学改革と大学財政システムの変容―日本型大学財政システムの歴史的特質と問題点―」としてまとめ、本論文は近く学術雑誌にて公刊される予定である。
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