1.2018年度(最終年度)は、1952年義務教育費国庫負担法の成立・実施・確立過程を中心に検討した。その結果、1952年義務教育費国庫負担法は、当初「義務教育費全額国庫保障案」として考案され、学校基準法と学校財政法が一つの法律となっていたことが特徴的であることを明らかにした。また、1952年負担法は、成立時点では、学校基準法の要素が削ぎ落とされていたこと、それ故に、学校基準法の一種である1958年義務教育標準法を必用とし、これをもって戦後段階における義務教育費国庫負担制度が基本的に確立されたことを論定した。 2.研究期間(2016~2018年度)全体の成果として、第一に、1952年義務教育費国庫負担法の立案・成立・実施過程を詳細に明らかにした。特に、これまで実施過程で問題となった義務教育学校職員法案を、①国庫負担法案、②教員身分法案、③地方教育行政改革法案、という三つの側面について全面的に分析し、その中核に義務教育を国の事務とする理念があることを指摘した。 第二に、1956年の教育委員会法の廃止と地方教育行政法の制定により、市町村立学校教員の任免権が都道府県教育委員会に移管される過程を詳細に分析し、途中段階で市町村立学校の教員を都道府県の職員とする案が有力であったことを明らかにした。地方教育行政法は、教育事務の国と地方の機能的分担論を一つの特徴とするが、その実態は、機能的集権を媒介として権力的再集権を図ったものであることを論じた。 第三に、1958年義務教育標準法の制定、1963年義務教育標準法一部改正、及び1664年「限度政令」改正について、従来未見の資料を用いて検討し、戦後義務教育国庫負担制度は、1963年義務教育標準法の制定によって基本的に確立し、1964年「限度政令」改正により「実員実額制」から「定員実額制」に移行したことで、最終的に確立したことを論定した。
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