研究課題/領域番号 |
16K04555
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
柳林 信彦 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 准教授 (30516109)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 教育委員会制度 / 地方教育行政機構 / 首長と教育委員会 / アメリカ教育改革 / 分権的教育改革 |
研究実績の概要 |
平成28年度においては、まず、首長-教育委員会関係分析のための理論的枠組構築を行っている。「首長-教育委員会関係構造に関する先行研究の考察」と「『効果的な学区』論に関する研究の検討」を中心に、教育政策形成に関する研究や教育行政機構改革に関する研究についての先行研究の収集と検討を行った。 先行研究の検討においては、米国で大規模研究を実施しているヘニグ(Jeffrey R.Henig)や教育政治学者のワング(Wong,K.K)の研究を中心に、また、「効果的な学区」論に関しては、フラン(Fullan,M)に加えて、ダーリングハモンド(Darling-Hammond)、マクロウリン(Mclaughlin)、ハイタワー(Hightower)等の「効果的な学区」論の先行研究の精緻な分析を中心に行った。 また、本研究において試論的に構築した理論枠組みを活用し、高知県及び高知市における教育振興基本計画と学力向上対策政策の分析を行い、教育改革政策の形成における首長-教育委員会関係の分析を行い、その研究結果を論文としてまとめた(柳林信彦「高知における首長と教育委員会の協働による地域教育課題解決-教育振興基本計画と学力向上施策に着目して-」、『日本教育行政学会創立50周年記念誌』(日本教育行政学会)2016年10月、pp.64-70.)。 次に、ケンタッキー州教育改革の事例分析に関しては、KERAに関する政策関連資料や改革実施過程における一次資料の収集のため、ケンタッキー州レキシントンでの調査を実施した。特に、首長主導型教育改革であるKERAの計画・実施において知事が果たした役割、改革実施における首長-教育委員会の関係構造、それらを踏まえた教育行政機構改革に関わる資料収集を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、〈1〉分権的教育改革の改革戦略分析、及び、首長-教育委員会関係分析のための理論的枠組構築と〈2〉ケンタッキー州教育改革の事例分析(教育行政機構改革、知事の影響力、改革戦略を中心に)が計画されていた。 〈1〉については、ヘニグ(Jeffrey R.Henig)やフラン(Fullan,M)、ダーリングハモンド(Darling-Hammond)等の先行研究の検討に基づいて、首長-教育委員会関係分析のための理論的枠組みについての試論を構築することができている。また、理論的枠組みの構築から一歩進んで、試論的に構築した枠組みを活用して高知県と高知市の教育改革政策、特に、教育振興基本計画の策定と学力向上対策における首長の関わりと、首長と教育委員会の関係構造の分析を行い、得られた研究成果を論文としてまとめることもできた(柳林信彦「高知における首長と教育委員会の協働による地域教育課題解決-教育振興基本計画と学力向上施策に着目して-」、『日本教育行政学会創立50周年記念誌』(日本教育行政学会)2016年10月、pp.64-70.)。 〈2〉については、ケンタッキー州の教育改革の調査を、レキシントンを中心に行っており、KERAの計画・実施において知事が果たした役割、改革実施における首長-教育委員会の関係構造等を考察するための基礎的な資料の収集、及び、ケンタッキー州の教育の展開に関する資料の収集を行う事ができた。 以上のことから、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると自己評価を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、引き続き「分権的教育改革の改革戦略分析、及び、首長-教育委員会関係分析のための理論的枠組構築」を進め、構築した理論枠組みをより精緻化する。先行研究の収集とその検討を行うと共に、28年度に構築した分析視角を用いて現地調査から得られたデータの分析を試行し、分析視角を相対化し修正・深化させ、精緻化を行う。 また、「ケンタッキー州教育改革の事例分析(教育行政機構改革、知事の影響力、改革戦略を中心に)」については、平成28年度の成果や学会参加などで得られた事項を参考にしつつ、二次調査を実施する。29年度では、州教育省、学区教育委員会への補足調査も行うと共に、KERAの成立に地域住民や親の立場から大きな影響を与えたプリチャード委員会を訪問し、地域住民・親からみた政策実施と政策評価の資料を収集する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の計画に基づく経費執行に関して7万7千円程度の未執行額があるが、これは、文献及び資料収集が当初の計画よりも若干遅れた事による。海外文献の手配に時間がかかったことが主たる原因である。ただしこのことは、研究の推進には大きな影響を与えていない。
|
次年度使用額の使用計画 |
当該資料の収集は、全体の研究計画の推進には必要なものであるため、未執行額は平成29年度中に文献資料の収集のために使用する予定である。また、それを除いて、次年度の研究は、当初の計画通り進める予定である。
|