まず、分権改革期における教育委員会の在り方に関して、1980年代以降の日本の教育委員会改革の展開について整理すると共に、2014年の地方行法の改正による教育委員会制度改革での首長と教育委員会との関係について明らかとした。 1980年代以降の教育委員会改革では、文科省による活性化論と経済界等からの縮小論や廃止論が繰り返されてきたが、2014年の法改正以降、縮小・廃止論は見られなくなっている。2014年の改革では、教育行政の地方分権、政治的中立性・継続性・安定性の確保、住民の意向の反映等の制度理念は残され、理念レベルでの「変化」はなされておらず、また、首長と教育委員との関係についても、現状が追認された形の改革であったと捉えられた。結果、2014年の改革は、首長の権限を強化したという特質はあるが、教育委員会の活性化論と捉えられることが解明された。これらは、「教育委員会制度改革の展開と教育委員会制度の現代的意義」(『教育制度学研究』第27号(日本教育制度学会)、2018年11月、pp.200-202.)としてまとめた。 次に、分権改革期に学校改善を進められる学校の在り方と学校と教育委員会の関係を考察した。分権改革期には、学校は自律的に改善を進めることが求められ、そのためには、学校の高度な組織化、組織的な学校経営の実現、校長のリーダーシップと共に分散的なリーダーシップが機能していること等が必要とされることがわかった。また、学校に対して教育委員会が支援機関として役割を果たすことも重要であった。これらは、「学校経営」(『MINERVAはじめて学ぶ教職⑧』所収(第8章「学校経営」)、ミネルヴァ書房、2018年4月)にまとめた。 最終的に、分権改革期の教育委員会は、蓄えてきた専門性を発揮して首長の同意を得て独力では難しい施策展開を図りながら、自治体の教育課題解決を図る必要があることが解明された。
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