本研究は、日本社会教育学会プロジェクト研究「自治体改革と社会教育再編」(2008年/平成20年)にて実施された「自治体改革と社会教育条件に関する全国悉皆調査」後の追跡調査を実施し、その変化の検討等を通じて、平成の自治体合併が社会教育条件整備にもたらした影響や今後の可能性を明らかにすることを目的としている。 変化の内容としては、第一は、非合併自治体に比べ合併自治体の方が「社会教育関連施設の委託化・嘱託化・有料化」及び「社会教育関係団体の再編」が進行してきていること。第二は、「社会教育関連施設の指定管理者制度導入」及び「社会教育関連行政の一般行政部局移管」は、非合併自治体の方が進行してきていること。第三は、公民館・図書館・博物館を含む「社会教育関連職員数」については、合併自治体及び非合併自治体の間に優位な差は見られなかったが、合併自治体間においてその格差が拡がってきていることなどである。 実地調査として平成の大合併後の地域政策として国が進める「小さな拠点」のモデルとされる高知県「集落活動センター」に注目し、社会教育条件としての可能性を検討した。高知県では自治体数が54から34へ減少し、社会教育の基幹施設公民館の市町村設置率も2011年段階で70.6%(全国45位)へと急減している。「集落活動センター」は2012年度の3か所を皮切りに2019年3月末現在で10市15町4村に50カ所が開所され、生活支援サービス、安心安全サポート、健康づくり活動、防災活動、鳥獣被害対策、観光交流・定住サポート、農林水産物の生産・販売、エネルギー資源の活用などに取り組んでいる。設立及び活動に当たっては、高知ふるさと応援隊などの協力を得ながら住民座談会やワークショップなど学習を通じて地域ビジョンを作成し、集落総会などでの住民合意を経ながら活動を展開していくなど、公民館的機能の代替・補完として期待できる。
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