研究課題
本研究では、就労後3年目の保育者を対象として、3年間の縦断的研究を実施することで、日々の保育行為が自身の価値観と結び付き、保育者の保育行為スタイルがどのように分岐するのか、保育行為スタイルの分岐プロセスを明らかにする。このような行為を裏づけている意味を含めて検討していくために、本研究では、ヤーン・ヴァルシナーの発生の三層モデル理論(Three Layers Model of Genesis:TLMG)に依拠した(ヴァルシナー,2013)。研究協力者は、愛知県内の公立保育園に勤務する2名の保育士(ミナ先生、マツリ先生、ともに仮名)である。2名の保育士は調査開始時、3年目であった。おおむね2~3ヶ月に1回を基本として、2016~2018年の3年間、半構造化インタビューを行った。その結果、三年間の中で「幼児担任としてのプレッシャーと不安」を抱えつつ、「クラス担任を取り巻く園文化」から学んでいること、特に「一緒に働く保育士からの学び」が大きく影響していることが明らかになった。その同僚からの学んだ保育行為を身体知化していくプロセスが明らかになった。特に、保育行為スタイルの分岐に対しては、一緒に働く保育士や園文化のありかたが強く影響しており、外在的文化的な要因が大きく影響していることが明らかになった。一方で、本研究では2名の保育士の語りを対象に保育行為スタイルの分岐プロセスをとらえたため、たとえば、最初から強く信念をもっているような保育士や男性保育士では状況が異なっているかもしれない。また、こういった園文化に馴染めない保育士は、異なる保育行為スタイルを模索するというよりも、離職をすることも考えられる。異なるライフコースの保育士の語りを含めて検討していくことが今後の課題となる。
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国際幼児教育研究
巻: 26 ページ: 51-64