研究課題/領域番号 |
16K04561
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
白鳥 絢也 常葉大学, 教育学部, 准教授 (40600383)
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研究分担者 |
澤田 敬人 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (20254261)
津村 公博 浜松学院大学, 現代コミュニケーション学部, 教授 (30310551)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教育学 / 生涯学習 / ブラジルの教科書 / 共生 / ユニバーサルデザイン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ブラジルで使用されている教科書の分析を通じて、多文化の「共生」に向けた実用化に資する教材モデルを構築することである。 外国人児童生徒を対象とした教材モデルを開発するときに教育研究者が持つべき視点の一つは、各国にはそれぞれの社会・文化的背景があり、学校があり、生活があり、その中での子どもの存在があることに留意することが重要である。つまり、日本の学校体制の中で、外国人児童生徒の母国の教育を踏まえた教育と、日本人児童生徒への国際理解教育が同時に求められるのである。しかし残念ながら、現状では日本の現行教科書の一部を母語に翻訳したものや諸外国の生活・文化(衣食住)に関する教養が中心である。それらはあくまで日本人が考え作った教材である以上、外国人児童生徒がその内容になじめない場合も確かに存在する。もはや「共生教育」の視点からの教育の内容・方法を更に検討すべき時期に来ているのである。そこで本研究では「ブラジル本国で使用されている教科書」(小学校)に着目し、選択した教科書の分析を通して、日本の子どもとブラジルの子ども両者のアイデンティティを生かしつつ、両者が共生できるための「教材モデル」を開発することを目指している。 本研究の目的を遂げることにより、わが国の公立学校に在籍する南米日系人児童生徒の自律的な学習を促進し、且つ多様な学力レベルや学習ニーズ、学習目標にも個別に対応することのできる評価の基準を確立する。また、彼らの学習社会への参加を促す教育方法について、学問的且つ実践的な観点から知見を得る。具体的には、ブラジルの教科書を分析して、日本とブラジルの子どもに共通するテーマおよび内容を掘り起し、「共生」の観点を洗練させる。彼らが在籍する日本の公立小学校の中で、相互理解のための学習材からユニバーサルデザイン教材の作成までの総合的な教材モデルを開発して効果を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はまず外国人児童生徒教育に関する先行研究を改めて詳細に吟味し、その特徴・問題点を抽出した。特に、わが国における多文化教育をめぐる中で、本研究の対象である日系ブラジル人だけではないユニバーサルアクセス型の学習支援への転換の必要性について新たな知見を得た。(研究フィールドである浜松市において急増するフィリピン人支援等)同時に、外国人児童生徒教育から、ユニバーサルデザインの多文化教育への転換の位置付けが求められることを指摘した。 これらのことから、当初一・二年次に予定していたブラジル本国調査を二年次のみとし、新たにフィリピン(ダバオ)における調査を加えた。ユニバーサルデザイン教材の作成までの総合的な教材モデルの開発に寄与することを意図した試みである。そのため、選択したブラジルの教科書分析及び教材モデルの抽出、その妥当性の検証、小学校における授業実践等についてはやや遅れており、二年次より実施することとなる。
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今後の研究の推進方策 |
異文化理解の前提としてのブラジル現地の社会や生活、教育の環境等の史的変遷について、実態がどうであったかを文献及び実地調査する。その際、主としてブラジルの学校のカリキュラムと教科内容に注目する。次いで、静岡県浜松市に在住しているブラジル人児童の学習・生活の実態を調査・検討する。(教育委員会や小学校、在日ブラジル人学校を訪問予定)そして、選択したブラジルの教科書(小学校国語・社会,1~4年生)の分析を進め、日本人児童とブラジル人児童両者の多文化共生を助長する教材モデルを抽出し、その妥当性の検証を開始するとともに、一部小学校において実践する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初一・二年次に予定していたブラジル本国調査を二年次のみとし、新たにフィリピン(ダバオ)における調査を行ったことで海外渡航費に差異が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ユニバーサルデザイン教材の作成までの総合的な教材モデルの開発を期し、このための費用として研究費を充てる。本研究組織とブラジル・リオデジャネイロ州立大学との協働・連携が可能になっており、予定していた海外渡航費として使用する。また、新たにフィリピン・ダバオ市との協働・連携が可能となったため、学際的な布陣により研究を強力に推進するために必要な場合はフィリピン渡航へ研究費を使用する。
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