幼児がより自由に造形表現をするために、幼児の描画表現や造形表現と教師や保育者の指導、保護者の影響について調査を行った。 国内調査では、前年度までに国内で収集した幼児302名の描画表現について、色彩、モチーフ、構図、研究者による評価について年齢別による特徴を見出した。幼児302名の担任保育者と保護者についても質問紙調査による分析を行った。その結果、保育者の指導では描き方や図鑑を示す等の工夫がみられたが、年齢による指導の違いはなかった。一方、描画表現には年齢による差が明らかであった。5歳児の保護者によっては描画活動に躾や字を上手に書くことを期待する様子がうかがえた。 また、造形活動を一斉に行う幼稚園と遊びの時間に行う保育所における、幼児の姿、活動のねらい、造形活動の実態、幼児の造形表現、について継続的に調査を行った。一斉活動の幼稚園では一人一人の実態に応じた指導や普段の遊びを取り入れた展開を行うことで、自由な表現が獲得できるよう指導や画材に段階を設ける工夫がみられ、幼児の造形表現にもその影響がみられた。自由遊びで造形活動を行う保育所では、特に5歳児クラスで描画が苦手な幼児は、描画を経験する機会が少なくなり好きな遊びの時間が多くなる傾向がみられた。 チェコ共和国での調査では、幼稚園と小学校での造形作品の収集と、教師・保育者への質問紙及びインタビュー調査を実施した。造形活動や図工での指導が一律でトレーニング的に実施される場合でも、技法遊びやコラージュなどと組み合せることで、個々の表現が広がる工夫がみられた。保育者は幼児や児童一人一人を理解することを心がけていた。保護者は保育者に公平な指導や成果を求めている様子がうかがえた。 幼児の造形表現は保育形態よりも保育者の指導による影響が大きいことが示唆された。これらの成果については、書籍、論文、学会発表、講演会、研修等で行った。
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