研究課題/領域番号 |
16K04568
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
関 直規 東洋大学, 文学部, 准教授 (50405106)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 三橋義雄 / 三橋喜久雄 / 三橋体育研究所 / 夜間体育実行会 / 市民体育 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本とイギリスを代表する地方教育行政機関であった東京市とロンドン・カウンティ・カウンシルに着目し、学習支援体制の構築における地域人材の発掘・活用について、日英の比較史のアプローチから明らかにすることをねらいとしている。この目的を達成する上で、日本では入手困難な一次資料の収集は不可欠である。そこで、今年度は二度渡英し、ロンドン・メトロポリタン・アーカイブズ、タワー・ハムレッツ・ローカル・ヒストリー・ライブラリー・アンド・アーカイブズ、ロンドン大学教育研究所ライブラリー、ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムのナショナル・アート・ライブラリー等を訪問し、所蔵資料の利用・撮影許可を得て、ロンドン成人教育史に関する一次資料を調査・収集した。そして、関連する行政資料、単行本、新聞・雑誌記事、地元資料等をデジタル・カメラで約9,000枚撮影した。 他方、東京市の社会教育史について、東京都公文書館、日本体育大学及び筑波大学附属図書館等が所蔵する一次資料を用い、最も継続的かつ組織的に展開した市民体育政策である「夜間体育実行会」の担い手とその特質を考察した。日頃、体育に縁遠い幅広い市民層を惹きつけ、市民が生活の延長線上に体育を実践できるよう尽力し、体育のすそ野の拡大を担ったのは、三橋義雄を中心とする体育指導者であった。大都市の豊富な専門的人材の組織化が、社会教育事業の基盤を成していたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリス現地における資料収集を効果的かつ円滑に進めた。特に、世界的に著名なイースト・エンド地区を担当するロンドンのタワー・ハムレッツ行政区(かつてのべスナル・グリーン、ポプラー及びステップニーの各行政区)に関わる一次資料を所蔵するタワー・ハムレッツ・ローカル・ヒストリー・ライブラリー・アンド・アーカイブズで、成人教育機関やその担い手に関する貴重な情報を得た。 また、これまで未解明であった「夜間体育実行会」における地域人材の組織化の実態を解明する成果をあげた。東京市の三橋義雄、三橋喜久雄、藤本光清並びに三橋体育研究所の所員等が、市民の経済的・社会的背景、年齢や習熟度等の多様性を理解しつつ、大都市に適した先駆的な実践を実現させたことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにイギリスで収集した膨大な一次資料を丁寧に整理、目録化し、慎重に分析することで、ロンドン・カウンティ・カウンシルによる中核的な成人教育事業とその担い手の役割を実証的に解明する。個々の資料の情報量は限られているが、それらを相互に参照・考察することで、現場の動向を立体的に明らかにすることができるだろう。 この作業と並行し、東京市の社会教育史についての一次資料の調査・収集を継続する。全国に散在する担い手の論稿や関連資料の収集に努めたい。東京市の社会教育の取り組みは多岐にわたるが、主要な事業に絞り、専門的な職業能力を持つ地域人材の発掘・活用の実態を中心に検討する。
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